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妬み
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結局、色々考えてみたけどこれから母さんとどう過ごしていくかの答えは中々出てこなかった。
あれから眼鏡がその話しを持ち出してくる事もなく、普段通りの生活が戻りつつあった。
こんな調子でずっと眼鏡の家に居候させてもらうわけにはいかない。でも、自分の家に帰るのが怖くなってしまった。
こういうのは、時間が経てば経つ程行動に移しにくくなるよな……
一体、俺はこれからどうすればいいんだろう。
「新?」
「っ‼︎は、はい‼︎」
急に耳元で聞こえた声にびくりとしてしまう。
顔を上げると、会長が心配そうな顔をしてこちらを見てる。
「大丈夫?」
「な、なにがですか?」
ついボケっとしちまってて、さっきまで会長が何を言ってたのか全く聞いてなかった。
今は生徒会の仕事をしてる最中だ。いつも通りの書類整理だけど……
「さっきからずっと上の空だけど……」
「あ…すみません……」
周りを見れば、眼鏡も大崎も俺の方を見てる。
周りに気付かれるほど俺はボケっとしてしまってたのか。
「もしかして体調悪い?」
「大丈夫ですよ。少し考え事してただけなので…」
「考え事?」
「樹、この書類また記載ミスあるぞ」
「え?」
不意に見せてしまった表情のせいで会長の心配が更に膨らんだ。その瞬間、眼鏡がすかさず会長に声をかけた。
「お前ちゃんと確認しとけよ」
「あれ、おかしいな…確認したはずなんだけど…」
眼鏡のおかげで俺はなんとかその場をやり過ごす事が出来たけど、会長が眼鏡のとこに行った後、今度は大崎が俺のところに来た。
「渋谷君、体調悪いの?」
「え、悪くねえよ?」
「ほんとに?無理は駄目だよ?……あ、この書類僕がやるから渋谷君は休んで…」
しまった。大崎もめちゃくちゃ心配性な奴だった。
「まじで大丈夫だって。サンキューな」
「で、でも…」
本当に体調は良好だ。こんなにも心配してくれてるのに、俺は変にみんなに気を遣わせて、おまけに自分の仕事も進んでない。
「渋谷君……そ、その…なにか悩み事あるなら言ってね…」
「おう!」
大崎がこんなに心を開いて向き合ってくれてるのに、きっと俺は今の悩み事とやらを大崎には言えない。
言ったところで、気分を害してしまうだけだ。
「大崎、やっぱこの書類手伝ってくんね?」
「う、うん‼︎」
手元にあった1束の書類を目の前の大崎に渡すと、大崎は目をキラキラさせながら快く受け取ってくれた。
大崎って、こんなに柔らかい雰囲気してたかな?
「あのね、渋谷君…その…僕も相談してもいいかな?」
「ん?おう!いいぞ!」
「……っ‼︎」
隣にちょこんと座った大崎は、目をキョロキョロさせながら急に顔を真っ赤にした。
突然の相談。それは秋人の事だった。
「ぶはっ、まじかよっ‼︎お前春人にプロポーズされたのか⁉︎」
「渋谷君っ‼︎シーッ‼︎」
「あ、悪りぃ悪りぃ」
大声を出してしまい、慌てて大崎が俺の口を手で塞いできた。
聞いた内容が面白すぎてまだ笑いが収まらない。
「秋人君にこの話し僕がしてたって言っちゃ駄目だよ?……」
「分かってるって……っ…ぶふっ」
話しの内容はこうだ。
秋人と付き合い始めて、互いの家によく行くようになり、その中で秋人の双子の弟である春人に懐かれ、つい最近、なんと春人から「ケッコンしよう」と大崎はプロポーズをされ、その現場を見た秋人が大激怒し、まだ小せえ弟の春人と秋人が大崎を巡って兄弟喧嘩をしたという話し。
にしても、あの臆病で小夏大好き春人が秋人を差し置いて大崎にプロポーズねぇ…
「は、春人君はまだ小さいから…その言葉の意味が良く分からないんだと思うけど…秋人君すごい怒っちゃって…」
「弟が恋敵かー。秋人も大変だな」
「大変どころじゃないよ……おかげでしばらく秋人君の家に行けないんだ……『春人は小夏という素敵なお嫁さんがいるだろ』って春人君を何としてでも説得するって言ってた」
いやそれも少し違うぞ秋人よ。
そしてお前も秋人の発言がおかしい事に気付け大崎。
「ふふっ、でもね…こんな事言ったら変かもしれないけど、僕嬉しかったんだ」
「……?」
大崎がくすりと笑う。
肩を縮こませて、小さくなって、一層顔を真っ赤にさせてぽそりと何かを呟いた。
「いつか……僕も秋人君や春人君と家族になれるのかなって思ったら嬉しくて…」
「………」
「あっ‼︎で、でも男の子同士は結婚出来ないって分かってるよ‼︎でもねその…いつか…秋人君との事もお母さん達に言えたらいいなって……認めてもらえたら……そしたらきっと……」
「…………」
タジタジになりながら、目の前で柔らかいオーラに包まれ、嬉しそうに好きな奴の事を語る大崎を見ると、胸の奥がぎゅっと熱くなった。
「家族……ねぇ…」
「渋谷君?」
大崎って、こんな奴だったっけ?
「ん、認めてもらえるだろ‼︎大崎ならさ‼︎」
「っ‼︎ほ、ほんとに⁉︎」
「おう‼︎」
こんなに俺は、ダチに対して妬みを持つ程嫌な奴だったかな?
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