アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
くそ野郎
-
刻々と過ぎた時間、もう辺りは真っ暗で街灯の明かりが怪しく光る中、自分の家を目の前にし足を止めた。
誰かが、俺の家の前で座り込み膝を抱えている。
「…………新?」
ぽそりと名前を呼ぶと、肩を震わせゆっくりとこちらを見上げてきた。
時間は、深夜0時を回ってしまっている。
あの後色々とまた用事をしていたのだけれど、こんなに遅くなるとは自分でも思っていなかった。連絡を入れようと思ったけど、携帯の電源が切れてしまっていてそれは出来なかった。
新を見てみると、まだ制服のままで、鞄も傍らに置かれている。
「お前……待つなら家の中で…」
「………だよ…」
「え」
何かを呟いた新。聞き返す前に、勢いよく胸倉を掴まれ、唖然としてしまう。
ギリリと音を立てて思い切り襟を締め上げられる。
「どこ……行ってたんだよ」
「…………………怒ってんのか?」
そう言うと、新は歯を食いしばり俺を睨んで来た。
さすがに、こんな時間まで連絡入れなかったのは悪いと思ってるけど、こいつはそんな事でここまで本気で怒ったりはしないはず。
「携帯の電源切れてて、連絡出来なかった。ごめん」
「そうじゃねえよ‼︎」
「っ、」
あまりにも大きな声で怒鳴られ、更にはぐっと襟を下へと引かれ前屈みになってしまう。
「今まで、どこ行ってたんだって聞いてんだよ…」
「……………」
嗚呼、この目……知っている。以前、こいつが俺の事を忘れてしまって、俺に対し本気で拒絶の意を示してきた時の目、新が本気でキレてる時の目だ。
「街に行ってた」
「…………っ…」
こういう時は、下手に嘘をつかない方がいい。
「お前の母親と、会ってた」
「………くっ………」
答えると、新は襟から手を離した。
脱力したまま俺から一歩離れ、肩を震わせていた。
「なんで、あの人に会った?」
「聞きたい事があった」
「聞きたい事…?」
「ああ」
「……………」
それに関して、新は問うてこなかった。
聞かれても言うつもりはないけど、新の様子から見て、その内容は聞きたくないのかなと思った。
それとも、そんな事はどうでもいいと思っているのか。とにかく、今の新はもっと根本的に違うものに対して怒っている様に見えた。
「どこで会ってたんだよ…」
「………街の喫茶店だよ」
「……………」
とりあえず、これ以上外では話せない。
よく見てみると、新の制服は汗でぐっしょりとしているし、おそらく夕食も食べてないだろうし。
「新、とりあえず中に入ろう」
「………………嘘つき…」
「え…」
肩に手を置いた途端、思い切り振り払われる。
「嘘つきって…」
「自分に聞いてみろこのくそ野郎が‼︎‼︎」
「ちょ、おい新‼︎」
ギロリと睨まれ、そう怒鳴り新は鞄を持って俺に背を向け走り出した。
すぐに追いかけたけど、途中で鞄を投げつけられ、終いには「ついてくんな」と言われ足を止めてしまった。
「んの馬鹿……」
新の鞄の中には、携帯に財布、そしてあいつの家の鍵が入っている。
これじゃ連絡の取りようが無いうえに、あいつは自分の家にも帰れない。
夜遅いし、このまま放っておくわけにはいかず、新が走って行った後を追うが、見失ってしまった。
「………嘘つきって……」
新が吐き捨てて言った言葉を思い出す。
「まさか……」
俺が、あいつの母親とどこで会っていたかを知っていた?
「いやそんなはずは」
あいつが俺の後をつけてたとは思えないし、何よりあいつが学校を出る前に俺は街へ行った。
そもそも、俺があいつの母親と会ってた事自体話してなかったのに、あいつはそれを知っているかのような感じだった。
「いや、そんな事は後回しだ」
知ってたとしても、この状況には納得がいかない。
とにかくあいつを探さないと……喧嘩が人より強いと言っても、この時間帯の野外は危ない。
手当たり次第、あいつが行きそうな場所に向かおう。
どうしてあいつがキレてるのか、もう一度会って、無理矢理にでも連れ戻して、抵抗するなら縛ってでもいいから、変な誤解を解いて、それからゆっくり話しをしてやる。
「にしても……」
『くそ野郎』は許せんな……
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
527 / 617