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自縄自縛
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「きりーつ、」
号令がかかり、授業が終わるとクラス中がざわざわと騒がしくなった。
昼休みに入る前は大体こんな感じだけど、正直今は周りのノリについていけない。
「渋谷?お前何してんだよ」
「っ‼︎」
教室の入り口から顔を出し、廊下をチラチラと伺っていた俺の背後から、ダチにそう声をかけられる。
「べ、別に何も?」
「ふーん…………変な奴」
慌てて誤魔化したけど、挙動不審な動きを見せた俺に対し、ダチに冷たい視線を向けられた。
「そういや、今日はあの先輩と飯食いに行かねえの?」
「へ、先輩?」
「副会長だよ」
「っ……」
ビシ、と指をさされそう問われる。
「お前今日ずっと変な動きしてるし、誰かを避けてるみたいだし、それってあの副会長だろ?さっきの休み時間だって、副会長が教室に来た時お前隠れてたじゃねえか」
「あ、あれは隠れてたとかじゃ…」
「お前なぁ、生徒会で何やらかしたか知らねえけど、早めに謝っとけよ」
「…………」
呆れた様にため息をつき、ダチは前から去って行った。
言われた事を反芻してみる。
確かに、俺は今日まじで不審者並みに行動が怪しい。学校に着いてからずっとだ。
ほんとは、眼鏡に会って、昨日の事謝って……鞄も返してもらおうと思ってたんだけど、朝あいつの姿を見た瞬間、声も掛けないまま思わず逃げてしまった。
「はぁ……」
ダチが言った様に、さっきの休み時間あいつがこの教室に顔出しに来たんだけど、それも反射的にというか、咄嗟に体が動いて教卓の下に隠れてしまった。
昼休み………待ち合わせ場所なんていつも決めてなかったけど、いつもなら携帯で連絡取り合って今日はどこで飯食べるか決めたりするのに、今はその携帯すらもない。
あいつなら、こういう状況だと、絶対この教室に迎えに来る。…………と思う。
「なんだよ渋谷ぁ〜、暗い顔しやがって」
「うるせえよ……」
教室の中へと戻り、自席に腰をかける。
前の席のダチがメロンパンを咥えながら後ろに振り返る。
「うおっ‼︎お前なんだその弁当は‼︎」
「え?」
徐に取り出した弁当箱を見て、ダチは目を丸くした。
「お前まさかそれは手作り弁当か⁉︎」
「あ、や……これは昨日ダチの家に泊まって……」
秋人が作って持たせてくれた弁当。
いいって言ったんだけど、今金も持ってない俺を餓死させるわけにはいかねえって作ってくれたものだ。
「うっわまじかよ‼︎お前いつから彼女いたわけ?」
「はっ⁉︎彼女⁉︎」
突拍子も無いダチの発言に思わず大声を上げてしまう。
「友達の家とか言って〜、ほんとは彼女の家に泊まったんだろ?」
「なっ、んなわけねえだろ‼︎」
全力で否定するが、ダチは面白がって更に俺の事を茶化してくる。
おまけに大声でクラス中に「渋谷が愛妻弁当持って来たぞー‼︎」なんて言い出しやがった。
「お前やめろよっこれは違くて‼︎」
「またまたぁ〜‼︎んな照れんなよ。で、お前いつから付き合ってんの?」
「だから違うって‼︎」
誤解を解こうとする俺を他所に、クラスのみんなが話題に食いつき俺に群がってくる。
「新ぁあ‼︎お前抜け駆けとか許さねえぞ‼︎」
「付き合ってるのってこの学校の奴?それとも他校?」
「同い年なのか⁉︎まさか年上⁉︎」
「どっちから告ったんだよ⁉︎」
「名前は⁉︎どんな子⁉︎美人か‼︎可愛い系か⁉︎」
揉まれる様に質問責めに合い対応ができない。
つか根本的に全部間違ってるのに、こいつら聞く耳持たねえ……っ…
「だからっ‼︎俺は……っ」
こんな事してる場合じゃねえし、それに何より……
「付き合ってる奴なんか居ねえってば‼︎‼︎‼︎」
ダチの声が飛び交う中、そう言い放つと同時に
教室の扉が開く音が聞こえた。
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