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返信メール
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ピシャリと言い放つと、その場が一瞬静かになった。それと同時に、教室の扉がガラリと開く。
静まり返る中、誰かが教室の中へと入ってきた。
周りを取り囲っていたダチ達が一斉にその方向へと視線を向ける。入ってきた奴に対して何か言っていた様にも思えたけど、この時の俺には聞こえてこなかった。
「あ、丁度良かったです先輩〜〜」
「副会長‼︎聞いてました?こいつ彼女に弁当作ってもらったらしいすよ‼︎」
ドクン、と心臓が跳ね上がる。
違うって言わなくちゃいけないのに、みんなが今声を掛けてる奴の方を向くのが怖い。
「副会長なら知ってるんじゃないっすか?」
「おまっ…だから違っ…」
ブルブルと震え出す手を握り締め、教室に入って来た奴に駆け寄ろうとしたダチの手を掴み、顔を向けたその時、
「………ぁ……」
「……………………」
そこに立つ奴と目が合った。
手には俺の鞄、その場所から俺の方をじっと見つめていて、気まずくなって俺はすぐにまた目を逸らしてしまった。
「副会長、こいつ今日なんかやらかしたんですか?」
「………なんで?」
張り詰める緊張感。
さっきの話し、どこまで聞かれてた?
いやでも、仮に聞かれていたとしても、ダチの前だし、ああ言うのが正解だよな?
でも、流石に……付き合ってる奴なんか居ねえってのはまずかったか?でも、でも……
「いやぁ、こいつ今日なんか変なんすよ〜。生徒会でなんかやらかしたんじゃないかって俺ら心配してて」
「別に何もしてないよ」
どうする?こういう時、なんて言えばいい?
「これ、そいつの私物だから。渡しといて」
駄目だ………顔を合わせる事が出来ない。
心臓が気持ち悪い程バクバク言ってる……早く何か言わねえと、眼鏡が行っちまう……
どうしよう。どうしよう……
「新、落ち着いたら連絡して」
「っえ」
ぎゅっと目を閉じた時だった。
それに反応して眼鏡の方へ顔を向けると、眼鏡は教室の入り口に立ってて、こちらに背中を向けてた。
「めが……」
「それと、生徒会の事で話しあるから。放課後生徒会室に集合な」
「………え……」
それだけを言い残し、眼鏡は教室から出て行ってしまった。
「ちょ、さっき生徒会の事って言ってなかった?」
「渋谷っ‼︎お前やっぱなんかやらかしたんだろ⁉︎」
眼鏡が行ってしまうと、一層俺の周りを取り囲っていたダチが騒ぎ始める。
だけどそんな声全くうるさいなんて思わなかった。
「渋谷?……」
うるさいのは、嫌な程、気持ち悪い程脈を打つ自分の心臓の音……
「わ、わり……ちょっと便所…」
「おい大丈夫かよ…」
勢い良く立ち上がり、心配するダチを他所に一目散に教室を出る。
気持ち悪い。何かが喉までせり上がって来たみたいな感じがして吐きそうだ。
喉に何か詰まってしまったみたいで、きっとこれを吐き出さないと取り返しのつかない事になってしまいそうな気がする。
「は、はぁっ……は、……」
廊下を全力で走って、階段を駆け上がり、その背中が見えると、その場で足を止めてしまう。
「め、眼鏡っ‼︎」
「……………………」
教室に戻ろうとした眼鏡を呼び止めると、眼鏡はゆっくりと振り返った。
「……っ‼︎」
「……………」
さっきは、顔見れなくてずっと目逸らしてしまったけど、その時初めて眼鏡がどんな顔してるのか知る事が出来た。
「……なに?」
「おま……」
無愛想に一言呟いた眼鏡の目の下にはクマが出来ていた。目も少し赤くなってる。
「き、昨日………」
「…………」
「寝て、ねえのか?……」
恐る恐る尋ねると、眼鏡は顔を逸らした。
「あ……俺…その………」
そうだよ……昨日あの後結局眼鏡に連絡入れられないまま秋人のとこに行ったんだ…
もしかして、一晩中俺の事探してた……とかじゃ……ねぇよな?…
「ただの寝不足だから大丈夫だよ」
「え…」
「お前の携帯、充電しといたから。せめて携帯はちゃんと持ってろ」
「……お、おぅ…」
「じゃ……」
「待っ……」
急に話しを断ち切られ、その拍子に教室の扉が閉まる。伸ばした手が行く場を失い下へと落ちてしまった。
「……っ……」
待てって言ったのに、あいつ俺の事無視した……
そんな事を、なぜか不意に思ってしまった。
「話し……聞けよ……」
誤解解かなくちゃ……あいつの事だから、絶対後でまたこの話しをネタに変な事してくるに違いない。
そうなったら大変だ。早く誤解解いて、あいつの機嫌………直さなくちゃ……
「そうだ……携帯…」
メールでも入れておこうと思い、教室に帰り携帯を手に持つ。
「あいつが拗ねると後々面倒だからなっ……」
“さっきのは違うからな‼︎”とメールで送ると、すぐに返事が返ってきた。
“さっきのって?それより、放課後の件忘れんなよ”
それだけ綴られていた返信メール。
いつもパッとしない文面を送ってくるあいつだけど、このメールを読んだ瞬間、体の血の気が引いていった。
「………それより、って……」
チクチク、チクチク、胸に何かが引っかかったみたいで、さっきまで喉につっかえていたものが、また大きくなった気がした。
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