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ぶっ殺してやる
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昨夜、一晩中 新を探しながら同時に考えていた。
本当に、新にこの事を話していいものなのだろうか。
俺自身、最初は話すつもりはなかった。
だけど昨夜……新が俺の前から逃げ出した時、新には本当の事を話さなくちゃいけないと思ってしまった。
俺がした事を知れば、もしかしたらこいつは俺の事を嫌いになるんじゃないかと思った。
でも、言わない方がきっとこいつを傷付けるし、この先ずっと隠しておくなんて事はきっと出来ない。
「ん……」
「なに、……これ?」
家に着いて、俺の部屋へ新を通した。
薄暗い部屋の中で、ベッドに腰を下ろした新へ幾つかの写真を渡す。
新は写真を見て首を傾げた。
「誰だか分かる?」
「……し、知らねえぞ…こんな奴……」
「………」
知らないままの方が、いいんじゃないのだろうか。
「4枚目の写真、見て」
「…………」
そんな思いが脳裏を巡る中そう言うと、新が4枚目の写真に目を通す。
その瞬間、新の目の色が変わった。
「……な、なんで……母さんが?」
「…………」
ふるふると、震え始める新。
新に渡した写真は全部で4枚。
その中の内、3枚は新の父親が写った写真だった。
そして4枚目は……
「なんでこいつと母さんが……つか、これなんだよ……」
新の母親から聞いた話しと、俺個人で調べた情報。
その全てを照らし合わせ、俺はある事を新の母親に提案した。
「ちゃんと終わらせて来いって言ったんだ」
「…へ………」
新の父親は、口では金さえ払えば新に手を出さないと言っていたようだけど、それは新の母親を騙す為の大嘘。
「お前、担保としてかけられてたんだよ」
「……ぇ………」
「お前の母親が、父親の代わりに借金返済出来なかった場合の保証品として」
膨らんだ借金は到底返せるものではなかった。無論、新の母親が稼いだ僅かなお金だけでは尚更。
それを見通して、裏社会で新の父親はこいつを商品にかけたんだ。
「だから言ったんだよ」
4枚目の写真
「死ぬ覚悟で、終わらせて来いって」
それは新の母親に、父親が掴みかかり暴行を加えているもの。
「その男が経営している店は幾つか法に触れるものもあった。でも警察が動く為には証拠が不十分過ぎる。だから協力してもらった。お前の母親に」
「…………」
「元夫からの暴行、及び恐喝を受けているという確実な証拠となる写真だ。その時の音声も同時に録音させてもらった。その内容の中に、お前自身を商品としてかけようとしていた事も全て入ってる。警察に渡せばすぐにその男は逮捕され、取り調べを受けるだろう」
「……………」
新の顔が陰る。
小さくなるその姿を見ると、手を伸ばしたくなるが、出来なかった。
「………取り調べが始まったら…その男の前科も暴かれる……」
「……………」
お前を守る為に、母親に危ない橋を渡ってもらったなんて、そんな事をさせた俺をお前はどう思うだろうか。
「………この男が…俺の親父か?…」
「…………そうだよ」
乱暴に手を振り上げ、必死に抵抗する細くて、今にも折れてしまいそうな程弱ってしまった新の母親を痛ぶる男。
「お前の母親はずっとその男からお前を守る為に寝る間も惜しんで、家にも帰らず働いてたんだよ」
騙されているとも知らずに。
お前に勘付かれない様にあんな態度を取っては遠ざける様な事して。
哀れだと思った。
愛情の裏返し。それが行き着いた先がこれだなんて。
「俺はお前の事は守りたい。大事に思ってる」
「…………」
「でも、お前が大事に思ってるもの全部をどうにかしようなんて出来ない」
酷い人間だと言われてもいい。
無責任だと言われても仕方がない。
ここから先は俺には何もしてやれる事がない。
これからどうしていくかは新と、こいつの母親次第。
せめて少しでもこの環境から抜け出させてやりたいと思った結果……この方法しか思い付かなかった。
「……母さんは………」
「え…」
不甲斐ない自分に苛立ちながら拳を握り締めていると、新がボソリと呟いた。
「母さんは、今無事なのか?」
「……ああ。今は署で保護してもらっている。お前の父親もすぐ……」
「………っ…」
「…………新?……」
肩が震えている。
「くそ親父が………」
そして、そうボソリと呟いた。
写真はぐしゃりと握り締められ、新の様子が変わったと感じた俺は、咄嗟に手を伸ばした。
だが、それを振り払い、新は勢い良く立ち上がった。
「ぶっ殺してやる……っ…‼︎」
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