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なるみちゃん
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その日の夜。
濡れたお互いの肌はいつもより吸い付きが良くて、冷たい体温は抱き合うとあっという間に熱く熱を持った。
「新」って、何度も俺の名前を嬉しそうに呼びながら、眼鏡は触れるだけのキスを繰り返した。
大きな眼鏡の体に身を委ねながら、何度あいつの口から「愛してる」の言葉を聞いただろう。
優しくて、大切にされてるって思いが溢れて、不覚にもまたあいつの前で泣いてしまった。
甘くてとろけるような夜だった。
こんな日がずっと続けばいいのに。
優しい眼鏡の声を、ずっと聞いていたい。
「渋谷‼︎お前どうなんだよ⁉︎」
なんて、思っていたのも束の間。
「だ、だからあれは誤解で…」
「付き合ってる奴いねえって言ったり、やっぱいるって言ったり、どっちなんだよ‼︎」
「ゔっ」
次の日の学校。
こないだの件でダチに「付き合ってる奴なんかいねえ」って言ってしまったけど、どうもダチは信用してないようで、どうしても俺から詳しく話しを聞きたいらしい。
朝からずっとこの有様だ。
俺もやっぱり、自分がムキになって「付き合ってる奴なんかいねえ」って言ってしまった事に対し、少し罪悪感はあった。
そして、「付き合ってる奴いる」と、ボソリとダチに訂正をすると、ダチは更にヒートアップ。
今度はどこの誰と付き合ってるんだと質問責めに合っている。
「くっそ!新のくせに生意気だぜ!」
「俺なんかこないだ彼女に振られたばっかなのによぉ〜」
「とびきり可愛い彼女だったら俺お前に殺意湧くわ」
「お前らなぁ……」
彼女彼女って言ってるけど……相手男だし……
それに可愛いというよりも……あいつは美人系?だよな?
「俺たちにも紹介しろよ〜」
いや紹介するも何も、毎日お前らも顔見てるだろ。
「つか、その子なんて名前なの?」
「ふぇっ?」
いい加減にしてほしい。と頭を悩ませていたところ、一人のダチがそう言ってきた。
そのダチに続いて、他の奴らも名前が気になる、と身を乗り出して俺に質問してくる。
「い、言わねえ‼︎」
「はあ⁉︎なんでだよ‼︎教えろよ‼︎」
「嫌だ‼︎」
「渋谷‼︎もったいぶんなって‼︎」
「っ、」
逃げようとしたらダチに後ろからがっしりと押さえ付けられる。
後ろから両脇に腕を通され身動きが取れない。
「は、離せお前ら‼︎」
「白状しないと……コチョコチョの刑に処す」
「ぶはっ‼︎や、やめろ‼︎」
脇腹をくすぐられ、思わず笑ってしまう。
ダチは楽しそうに俺をくすぐりながら、尚も彼女の名前はなんだと、しつこく聞いてくる。
「あ、副会長さん」
そんな時、教室の扉が開いた。
俺をくすぐっていたダチは手を止め、入ってきた眼鏡の方へかけて行った。
「楽しそうな事してるね」
め、眼鏡………
「聞いて下さいよ副会長〜、渋谷の奴、やっぱ彼女いるってさっき白状したんすよ?」
ふぉ‼︎ な、何言ってやがるてめえ‼︎
「……へえ」
ニヤリと笑う眼鏡。
その顔は、昨日の優しい眼鏡の面影なんか一切無く、真っ黒くて意地悪な笑顔だった。
「生徒会の事で新に用があったんだけど………みんなで何してるの?」
「彼女の名前を吐かせようとしてるんす‼︎あいつ全然言わなくて」
くぉおおおおお‼︎てめえこの野郎‼︎
んな事言ったらそいつが…っ‼︎
「そうなんだ………」
「っ、……」
眼鏡がニタリと笑みをこぼしながら、こっちへ近付いてくる。
もう、嫌な予感しかしない。
俺の目の前で足を止めた眼鏡は、屈んで俺の顎に指を添えてきた。
「それ、俺も気になるなぁ」
こんちくしょうめ‼︎‼︎やっぱりこうなるのかよ‼︎
「やっぱ副会長も知らないんですね‼︎なら尚更渋谷に吐かせないと……」
吐くも何もねえよボケが……
俺と付き合ってるのはてめえらの目の前でニタニタしながら悪魔の尻尾振ってるそこの眼鏡だよ。
「新が付き合ってる奴の名前、知りたいなあ?」
「……っ」
昨日までのこいつはどこへ行った。
やっぱり優しい眼鏡なんて長続きしない‼︎‼︎
「ほら、聞いててやるから言えよ」
「うっ……」
耳元で眼鏡が囁く。
ゾクリと体が震えた。
「渋谷〜はーやーくー‼︎」
眼鏡に便乗し、周りの奴は手拍子までし始めた。
もう抵抗しても無駄だと俺は悟った。
「…………み」
小さく、ボソリと呟くと、うるさかった手拍子は一瞬で止まりみんなが耳を傾ける。
「なに?聞こえない」
そしてこのクソ眼鏡。
ほんとに腹立つ殴りてえ
「………な、……なるみ」
渋々名前を言うと、ダチは「おお〜‼︎」と歓声を上げた。
「なるみちゃんかあ〜‼︎可愛い名前だな‼︎」
「くぅー‼︎ちくしょう聞いたら聞いたでなんか悔しい‼︎」
「あれ、でもなるみってどっかで聞いた事あるような……」
「………」
ワイワイと騒ぐダチの後ろで、眼鏡が口元に手をやり笑うのを必死に我慢してたのを見て、
俺は今日、二度目の殺意が湧いた。
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