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うわさ
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清掃活動の件をみんなに伝え終わり、解散をした後だった。
少し時間が空いて、生徒会室の扉が開いた。
そこに立っていたのは、険しい顔を見せる新だった。
「会長……その、ちょっとお話ししたい事が…」
遠慮がちにそう呟き、新は僕の目の前まで歩みを進める。
「どうしたの?」
そう問うと、新は口籠りながら何かを呟く。
「あの…さっきの清掃活動の事ですけど…」
「?うん」
始めは、“次の会長について”の事が要件だと思ったが、そうではないらしい。
新は先程話した清掃活動の活動時間について、僕に一つ提案をしたきたようだ。
「その、ちょっと家で色々ありまして……しばらくの間、放課後は居残り出来なくなってしまって…」
申し訳なさそうに新はそう言った。
新が提案してきた内容は、清掃活動の時間を朝にも設けてほしいとの事だった。
家で色々あった…。その事については深く触れなかったが、それが新にとってとても大事な事だというのは言われなくても分かる。
「分かった。放課後は部活に出る生徒もいるだろうし。曜日で分けて、朝と放課後のどちらか一つの時間帯に清掃活動をするよう僕の方でシフトを組んでおくよ」
新は朝のシフトに出るように。とお願いをすると、パッと顔を明るくさせ、「ありがとうございます」と言って生徒会室から出て行った。
新が退出した後、背凭れにもたれかかる。
目の前の資料に目を落とし、さっそく清掃活動のシフトを組もうとしたところ、今度は勢い良く生徒会室の扉が開いた。
「いっちゃん‼︎」
次に入って来たのは、酷く息を切らした1匹の大型犬。
顔面蒼白で、その手には廊下に貼られていた一枚のポスター。
「しばらくの間一緒に帰れんって何で⁉︎」
「日野、声が大きい」
「これ!これやろ⁉︎清掃活動‼︎なんで俺に言うてくれんかったが⁉︎いっちゃんが参加するなら俺も参加したのに‼︎」
大声を荒げながら、日野はポスターを僕に見せてくる。
日野は何で言ってくれなかったんだと目の前でボタボタと大粒の涙を流し始めた。
何でこんな事で泣くのかと呆れてしまう。
「主催者は僕だよ?僕が参加するのなんて当たり前でしょ」
「やきなんで俺に教えてくれんかったが?って聞きゆうがやんかぁ…」
「…………」
ズビーっ、と鼻水をすする日野は見てられない。
ハンカチを差し出すと日野は容赦なくそれで鼻をかんだ。
「……洗って返してよね」
「ゔ、」
ギクリと肩を震わせた日野。
どうせならそのハンカチは貰ってくれてかまわないと言ってみると、日野は「絶対キレイにして返します」と言った。
「いっちゃん……途中参加って出来んが?」
「それは出来るけど、君は駄目」
「な、なんでっ‼︎」
ブワっとまた涙を目に浮かべる。
どうして自分は駄目なんだとおいおいと泣きじゃくり始めた。
日野を参加させなかった理由は簡単だった。
空いた時間は勉強に使ってほしいという言わば僕の良心だ。
僕と同じ大学を目指すなら尚更。
それを伝えると、日野はまた泣き始める。
「みっともないから泣かないでよ」
「ゔぅっ……だって…3週間もいっちゃんと帰れんって俺…死んでしまう……」
「たかが3週間でしょ。それに活動が終わった後に一緒に帰ればいいだけの事でしょ?」
「いっちゃん分かってない‼︎俺は心配しゆうが‼︎」
「っ、?」
急にぐいっと腕を掴まれる。
日野が言った言葉が理解出来ず、思わず首を傾げてしまう。
「この清掃活動の参加者……ほとんど一年生って聞いたがやけんど……」
「?……だから?」
「……あの噂知らんの?」
うわさ?……なんだそれは。
眉間にしわを寄せた日野の顔がどんどん近付いてくる。
「……っ……」
そこで気付いた。
「……日野」
「あだっ‼︎」
どさくさに紛れてキスをしようとした日野の額に一発デコピンをお見舞いしてやると、日野は額を押さえながら僕から手を離した。
「ひ、ひどいっ」
「こっちのセリフだよ。いきなりなんなの」
「チューしようとしただけやん‼︎」
「そんな雰囲気じゃなかったよね?今の話しの中でどうしてそうなるの」
「けんど俺のせいやない。チューしたくなる様な顔しちゅういっちゃんが悪い」
「…………」
この男……。
口先を尖らせ、人差し指と人差し指を合わせながらモジモジと体をくねらせる日野を見て少しイラッとしてしまう。
「で?さっきの話し。何?噂って」
ため息を吐き、日野に先程の話しを振る。
「ほんまに知らんの?」
「…だから、何の……」
要件は焦らさないでほしい。言うなら言うで早くしてくれないかともう一度ため息を吐くと、日野はむすっとした声で小さく呟いた。
「生徒会ファンクラブの噂…」
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