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これ以上に辛い事はない
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ファンクラブの噂を耳にしたのは、つい先日の休み時間に、体育館の側にある自動販売機に飲み物を買いに行こうとした時やった。
何やら体育館裏から話し声が聞こえ、耳を傾けたら丁度そんな話しを一年生二人組みがしよった。
最初は何の事かさっぱり分からんかったきそのままスルーしようかと思うたけんど、会話の中でいっちゃんの名前が出てきた瞬間、つい気付けば盗み聞きをしてしまいよった。
けんど、その一年生二人の会話はどうも声が小さくて、まるで誰かに聞かれんようにコソコソと話しゆう感じやった。
一人の一年生が徐ろに財布を取り出し、もう片方の一年生にお金を渡す瞬間を目撃して、俺は咄嗟に二人の前に出てしもうた。
『あっ』
するとお金を渡した一年生は俺を見て大袈裟にビックリして、もう片方の一年生から何かを受け取っちょったらしく、慌ただしくポケットにそれを突っ込みその場からパタパタと逃げていった。
『あは、すまんの〜。邪魔してしもうた?』
その場に残ったもう一人の一年生に笑ってみせると、その一年生は『いえ、全然大丈夫ですよ』と言って微笑み返してきた。
楽しそうな話しをしよったき、俺も混ぜて欲しかったと言うと、その一年生はあははと笑い、『別に大した事じゃないですよ?』と言った。
『ほぉ〜……そうかのぅ』
そしてその後すぐに、一年生は用事があると言って俺の前から立ち去る。
その一年生はまさに優等生と言った言葉が当てはまるような姿勢の良さと、言葉遣い。そして一度も崩す事のなかった笑顔が印象的やった。
『…………ん?』
まぁ、この時はまだファンクラブに関して興味も何も無かったがやけんど、さすがに一年生が立ち去った後にそこに落ちちょったモノを見ると、嫌でも気にしてしまうようになる。
『これ…………』
そこに落ちちょったのは、4枚の写真やった。
ぜーんぶ、生徒会メンバーが写った写真。
どちらの一年生が落としていったものかは分からん。
さっきの一年生が落としたものかも分からん。
でもそんな事はどうでもよかった。
この明らかに隠し撮りをしちゅう写真を、誰かが今もその行為を続けゆうと考えると、居ても立っても居られんくなった。
『いっちゃん‼︎』
やきあの日、俺は慌てていっちゃんの元へ行った。
けんど、俺が色々とファンクラブの噂について調べゆう間に、いっちゃんは俺に内緒で一年生と清掃活動なんて呑気な事をすると言い始めた。
あの写真を見せれば、いっちゃんやってさすがに危機感を覚えてくれるやろうと思うたけんど、いっちゃんは相変わらず冷静で、どこか呆れた対応をされた。
ついムキになって、今朝あんな事をしてしまったけど…………俺はもっといっちゃんに警戒心を持ってほしくてしただけや。
怖がらせるつもりなんて………………
「…………っ……」
…………いっちゃん……震えよったな……
さすがにやり過ぎた?……あんなに怒ったいっちゃんの顔初めて見た……
『だから、そういうのはいいから。君は自分の事だけ考えててよ』
いっちゃんの言葉を思い出す。
「……いっちゃん…俺の事全然分かってない……」
相手が俺やなかったら簡単に振り解く事が出来るって言うたけんど……ほんまに?
あんなに震えて、あんなにガチガチに体硬直させて……あんなに力の無い細い身体で……ほんまに襲われても振り解く事出来るが?
「……はぁ……」
乱暴に触れてしまった。
優しくぎゅぅうううって抱き締めちゃりたい。
あんなに怖がられるとは思うてなかったし、何より俺やと気付かんかったことが、結構ショックやったり……
「…課題終わらんといっちゃんに触れん……触ったら……絶交…………」
ガクッと肩を落とす。
いっちゃん、絶交とか小学生みたいやで。
それに、最近まともにちゅーもしてないのに指一本触ったらいかんとか…………
これ以上に辛い事はないわ……
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