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告白を断る理由
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お昼休みはあっという間に終わってしまった。
あの後、最初は驚いたけど冷静に考えてみるとボールペンが同じなんて事は別に気に留めなくていい事だと思えた。
少し、日野や成海に言われた事を気にし過ぎているのかもしれない。
……結局、お昼ご飯は食べないまま、午後の授業を受ける事になってしまった。
言うほどお腹が空いてるというわけではないんだけど……
「月島ぁ〜」
5限目の休み時間、クラスメイトに名前を呼ばれる。
教室の入り口から僕の方を見て手招きをしていた。
何だろうと思い、椅子から立ち上がり入り口の方へと向かう。
「ん。お前に用があるってさ」
「?」
クラスメイトは廊下を指さした。
教室から出てみると、一年生の女子生徒が三人そこに立っていた。
そのうちの一人の背中を二人の女子生徒が押していて、一歩僕の前に近付いた子は、頬を赤らめ、身をよじらせていた。
「こりゃ告白だぜ」
ぼそりと、僕を呼んだクラスメイトが耳元で呟く。
「用って何かな?」
そんなクラスメイトを教室の中へと追いやり、目の前の女子生徒に向け、笑顔でそう聞いてみる。
「……あ、あの……」
か細い声でその子は呟いた。
先ほどクラスメイトが言ったように、この状況からして告白なのかなとは思った。
彼女の耳元で二人の友人が何かを囁いているところを見ると、尚更そう思える。
「月島……先輩って……その」
「うん」
教室からクラスメイトが数人顔を出してこちらの様子を伺っている。
場所を変えた方がいいのか考えたが、目の前の彼女にはその気はなさそうだ。
「つ、付き合っている人とかっ……いますか?」
「………………」
彼女は目をぎゅっと閉じ、そう言った。
少し、なんて答えようか迷ってしまう。
後ろからはクラスメイトが彼女が言った発言を聞いてはしゃぐ声が聞こえる。
「………………」
「……っ……」
沈黙が続いた。
先ほどよりも顔を赤くする一年生。
告白を受けるのは、初めてというわけではない。
少し前までは好きな人なんていなかったし、恋愛をするのはまだ早いと思っていた。
だから、断る理由は簡単だった。
「……うん……いるよ」
「……っ、」
今は、これが答え……でいいんだよね?
「そ、うですか…………」
彼女はあからさまにショックを受けた顔をする。
今にも泣き出してしまいそうなその表情を見ると、先ほどまであんなにはしゃいでいたクラスメイトは静かになった。
その後、本当に泣き出してしまいそうになったその子は、友人に連れられ僕の前から去っていった。
その背中を見届け、僕は席に戻る。
こういう事は今まで何度もあったというのに、この時は何かが違った。
告白を断る理由。……まさか、あの馬鹿がその理由になるなんて思ってもみなかった。
「…………」
窓の外を眺める。
日野の顔が頭に浮かぶと、なぜか無性に
会いたい。なんて思ってしまった。
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