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僕のせいだ
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放課後。今日は清掃活動も早めに終わり、一年生達を解散させて生徒会室に戻る。
その道中、活動報告書を提出する為一度職員室に向かった。
今回の活動に関しては先生達からの評価も良く、来年度から本格的に清掃活動を導入するよう話しが進んでいるらしい。
僕としては、生徒会メンバーを選ぶ為の一つのキッカケを含めたものだったが、結果として学校に少しでも貢献出来ているという事は何よりも嬉しい。
もっと頑張らなくては……
「あっ会長‼︎」
「?」
生徒会室の前に到着すると、廊下の向こう側から新の声。
足を止め、振り返ってみると、眉を吊り上げた新が僕のほうへと駆け足で向かって来ている。
その後ろには成海が。
「そんなに怖い顔をしてどうしたの?」
僕の目の前で足を止めた新は怒った表情をして後ろにいる成海を指さした。
「会長‼︎こいつに一発ギャフンと言ってやって下さい‼︎」
「え?」
何のことだか全く理解が出来なかったが、また成海が何か意地悪をしたのかな?と思い僕は成海の方へ視線を移した。
だが、成海は怪訝な表情をしてすぐに僕から目を逸らす。
「成海、一体何をしでかしたの?」
「………」
成海は何も言わなかった。
「あんまり新を困らせないであげてね」
このやり取りも慣れてしまった。
二人が付き合い始めてだいぶ経つのに、この二人はいつまで経っても痴話喧嘩が絶えないようだ。
なんて、微笑ましくもそう思っていた。
「会長、確か貸し出し用のジャージありましたよね?」
怒った声で、新にそう聞かれる。
なんだかその質問に少し違和感を感じた。
「え、うん……あるけど」
「すみません、それ貸してもらっていいですか?」
「……それは大丈夫だけど」
どうしてそんな事を?と思った時、その次に新が言った言葉を聞くと、僕の中にあった違和感は更に増した。
「こいつ、俺のジャージをどっかに隠したんですよ」
「え」
「朝ちょっと喧嘩したんですけど……その仕返しかなんか分かんないですけどガキみたいな事しやがって」
「…………」
ダン、と新は地団駄を踏んだ。
どうやら新はかなり怒っているらしく、成海の方へ視線を向けて舌打ちをする。
「てめえ明日までに返さねえとぶん殴るぞ」
「それはお前の態度次第だって言ってるだろ」
「チッ……ガキが」
新はまた舌打ちをして、そのまま成海を置いてこの場を去ってしまった。
少し呆然としてしまう。
先程までの会話、そして成海の態度。
何もかもが僕にとっては違和感だった。
「……成海」
嫌な胸騒ぎがする。
成海は大きなため息をつき、ギロリと僕を睨む。
「さっきの話し…」
「俺じゃねえよ」
「…………」
即答で返ってきた答え。
それが全てだった。
「なんで新にそう言わなかったの?」
「言えるわけないだろ」
僕の中にあった違和感。
それは成海はそんな子供じみた事は決してしないという事。
そして、新がかなり本気で怒っていたという事。
「この状況じゃ、ああ言うしかないだろ」
「うん……多分、お前が取った行動は正解だよ」
恐らく、中途半端にふざけた態度を取っていたら新は犯人が成海だとは思い込まなかっただろう。
何を言って新をあそこまで怒らせたかは分からないけど……
でも、これでようやく今回の件はただ事じゃないと確信した。
確実に生徒会メンバーの私物が盗まれつつある。
恐らく成海はそれを新に悟らせぬよう、自分がやった。なんて嘘を吐いたんだろう。
「とりあえず、ここじゃ話せないから一旦生徒会室に入ろう」
詳しく話しを聞こうと、僕は生徒会室の扉に手をかける。
成海は少しイラついている様にも見えた。
それもそのはず。こんな事で新と険悪にはなりたくないだろうに。
「だから言っただろ、早いうちに…」
「…………っ…」
「……樹?」
僕の考えが浅はかだった。
もっと警戒をするべきだった。
「おい何してんだよ、さっさと……」
扉を開け、中を見渡す。
僕はそこに広がる光景を見て目を疑った。
「……んだよこれ」
足を踏み入れると、全開になった窓から風が吹き込み、部屋の中に散らばる無数の資料が宙を舞う。
本棚は荒らされ、ソファやカーテンは引き裂かれ、書類はズタズタ、飾っておいた写真達は写真立てから抜き取られ消えてしまっている。
僕の机の上も荒らされており、何がどこにあるか分からない程に生徒会室はぐちゃぐちゃだった。
「……おい…犯人はファンクラブの奴らとか言ってなかったっけ?」
「……推測だけど……少なくとも僕はそうだと」
「生徒会を好いてくれてる奴らがする事だとは思えねえぞ」
「……うん…」
おかしい……これじゃまるで僕達を恨んでるとしか思えない。
軽率な判断だった。窃盗や盗撮をしていた人がファンクラブの誰かだと……
だけどこれはどう見ても……
「成海、新達にはしばらく生徒会室には来ないようにと伝えて。貸し出し用のジャージは明日僕が新に届けるから」
これは僕の責任だ。
「……………どうする気だ?」
注意を怠り、この件について軽く捉えていた僕のせいだ。
何としてでも、やった人物を見つけ出さなくては。
「僕に考えがある」
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