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夕暮れ時
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「なぁ、俺って会長になれると思うか?」
清掃活動が終わり、校舎の中へと戻ると隣を歩く新がそう聞いてくる。
ここしばらくの間は、例の体操着の事もあり、新の俺への無視期間が続いていたが、それについてはもういいのか、今日は朝から普通に話しかけられた。
数日置けば元に戻るタイプの奴で良かった。
「なに?なりたいの?」
「うーん」
そう言えば、樹が前に次の生徒会長についてを新と大崎に話すって言ってたな。
すっかりそんな事忘れていたけど、次期生徒会メンバーを選ぶ事をひとつの目的として設けられた今回の清掃活動。
活動期間は3週間。今日で2週間目になる。
「やりたいならやれば?金髪生徒会長2代目だな」
「お前馬鹿にしてんだろ」
「さぁ」
「……つか、俺のは染めてるだけだし、会長は天然。同じ金髪でも一緒にすんな会長に悪いだろが」
別にそれは知ってるけど、なんでそこであいつに悪いってなるんだよ。
「染めるのやめろよ。髪傷むだろ?」
「もう遅ぇよ」
軽く舌打ちを返されてしまう。
歩く速度を速め、俺の前を歩く新の髪に視線が行く。
「わっ、なんだよっ」
「んー……」
髪に手を伸ばし触れてみる。
これまであまり気にしなかったけど、毛先すげえ痛んでるし、何よりここまで綺麗な金髪にするにはブリーチを何度もする必要がある。
「うん、まだハゲてはないな」
「なっ‼︎」
ブリーチってし過ぎると頭ハゲるよな?
「おっけー分かった。お前今日から髪染めるの禁止な」
「はあ?」
「染めたら許さねえからな」
「ちょ、なんだよそれ‼︎この俺にプリンになれってか‼︎」
「なれよプリンに」
眉を吊り上げる新の頭を少し強めに撫でる。
俺とした事が。どうして今日までこの事に気づけなかったのか。
黒髪の新か。悪くねえな。
「……っなにニヤニヤしてんだよ」
「別に?」
「つか、話しが逸れただろが」
再び歩き出した新に続き、しばらく廊下を歩く。
会長になりたいのかなりたくないのか、新は曖昧な事ばかりを口にしていた。
俺としては、別になりたければなればいいとは思うけど…
「なぁ眼鏡」
「ん?」
3年の教室が並ぶ廊下で新が立ち止まる。
夕暮れ時で、オレンジ色になる外の景色を窓から眺めながら新は呟く。
「言っていいんだそ…」
「なにを?」
「……だから……その」
口籠る新が言った言葉。言ってもいいって……なにを?
分からず、新の側に近寄り様子を伺う。
「俺、会長の事は尊敬してるし、俺もあんな風になれたらって思うけどよ」
「うん」
「……お前……やじゃねえのかよ」
『あ。』と、その時気付く。
新が俺になにを言ってほしいのかを。
態度を誤魔化しながら、視線はずっと窓の外を眺める新。
けど、よく見ると頬が真っ赤だ。
「悪い、何のことだか分かんねえわ」
こいつまじ可愛すぎ。
「っな、ならいい‼︎」
「待てって」
限界になったのか、その場を走り出そうとした新の腕を後ろから掴む。
引き寄せると、さらに新の顔が赤くなった。
「俺になにを言ってほしいの?」
「……っ何でもねえ…喋るな」
「新さ。ヤキモチ妬いてほしいならちゃんとそう言えよ」
「はっ?…誰がヤキモチなんか‼︎ふざけんなよ」
「俺の前で樹の話しなんかしてさ。俺に“会長”に対してヤキモチ妬いてほしかったんだよな?」
「ちげぇし‼︎勘違いにも程が…んんっ⁉︎」
顔をこちらに振り向かせて口を塞ぐ。
キスしただけで大人しくなるんだから可愛くて仕方ない。
「ぷはっ」
「あれ、もしかして息止めてた?」
今回舌は入れなかったけど、割と長めのキス。
「別に“会長”を尊敬するのはいいよ。そんな事で俺はヤキモチ妬いたりしない」
「眼鏡っ離せバカ‼︎」
あーかわい。全力で抵抗してないとこがまたイイよな。
「新が好きなのは俺だろ?」
「なに言ってんだ‼︎俺はお前の事なんて昔から…」
「“大好き”だよな?んな事分かってるよ」
「だから違っ」
ここ最近色々あって忙しかったけど、さっきの一瞬ですげえ癒された。
こいついじるの本当飽きねぇわ。
「そう言えば、最近シてねぇよな?」
「へ……」
きょとんとする新を見ると笑みが零れる。
「今日はこのまま俺の家な」
「ちょ、勝手に決めんなよ‼︎」
「そん時にさっきの事についてのお仕置きしてやるから」
「はあ?つか、さっきの事って……」
「俺じゃなくて樹を尊敬してた事に対してのお仕置きに決まってんだろ?」
「なっ‼︎お前さっき別に妬かねえって言ったじゃねえか‼︎」
「あぁ、あれウソ」
「っ‼︎」
べ。と舌を見せると真っ赤になる顔で俺を睨み付けてくる。
「チッ……くそ眼鏡が」
「はいはい。ほら、早く鞄取ってこいよ。先に下行っとくから」
そう言うと、新は地団駄を踏んだ後、あからさまに怒ってますオーラをかまし出しながら自分の教室に向かった。
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