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災悪
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鞄を教室に取りに行った時、水田が俺の事を呼んでる一年がいると言ってきて、この屋上に来た。
眼鏡を待たせていたし、どうしようかと思ったけど「すぐに済みますから」と言われたから、それならいいかくらいに思って来てしまった。
屋上で俺を待っていたのは、生徒会メンバー候補の一人。
話の流れでなんの為に呼び出されたのかは分かったけど……
「…………」
「………………」
眼鏡が席を外し、改めて二人きりになる。
黙ったまんまだし、何を言えばいいんだ?
正直、告白とか受けるの眼鏡と会長を除けば初めてじゃね?
「あ、あのさ」
つーか、もう返事したも同然だろ……
付き合ってる事を認めた訳だし……
「俺の勘違いだったら悪いんだけど、俺の事好きなの?」
「…………」
コクっと頷かれ、余計に空気が重くなる。
「そ、そっか……」
くぁぁぁぁぁっ、なんて言えばいいんだよ‼︎
場慣れしてねぇ俺にはどうすればいいかが分からない‼︎
「えっと、何つーかごめんな。さっきも言ったけど俺あいつと…」
「上城先輩の何が良いんですかっ‼︎」
「っ、」
ビリっと鼓膜が震える。
取り乱した事に気付きすぐに謝罪をされたけど、一瞬まじでビビった。
「……逆に聞くけど、俺の何が良いんだ?」
「え……」
こいつと顔を合わせたのは清掃活動が始まった時、丁度2週間くらい前だ。
生徒会の仕事だから俺は見てやってるだけだし、こいつから俺に話しかけてくる事だって滅多に無かったし。
「俺、見た目こんなだからさ。目つきも悪りぃし、口も悪い。良いとこなんて欠片もお前に見せてないはずだけど」
「俺はっ」
挑発ではなく、真剣に聞きたい。
ちゃんと向き合わないと相手に失礼だ。って……何様だよ俺は……
「……い……です」
「は…?」
今にもキャパオーバーしそうな顔で、何かを呟いたみたいだが、肝心な部分が聞こえなかった。
「っ可愛いから……です」
え、?は?俺が?
またもや頷く一年を前にし、口が開いてしまう。
「渋谷先輩……何に対しても一生懸命じゃないですか……それに上城先輩といる時だけ…すごく可愛い顔するから」
ちょ、ちょっと待て……俺そんな顔してたか?
つかどんな顔だよっ
「……俺にもあんな顔してほしいってずっと思って……」
「っ……」
やばい。これは別の意味での不意打ちだ。
可愛いとか言われるのは好きじゃねえ。
けど、眼鏡だけに見せてる特別な顔があるって事が周りにバレるほど……俺は……
「渋谷先輩って、結構分かりやすいですよ?」
遠慮気味に言われ、トドメを刺される。
耳まで熱い。多分今眼鏡にこの顔見られたらやばい。
俺が眼鏡の事をどれだけ好きか……
からかわれるに決まってる。
「……俺が入る隙間は無いですよね?」
手の平で顔を隠しながら、悪い、と一言応える。
「そ、うですか……そうですよね……上城先輩に俺なんかが敵うわけ……」
違う。そういう事じゃない。
あいつより頭や顔や声、性格が良くても、きっと俺はあいつじゃないともう好きになれない。
「ごめん」
告られて、改めて気付いた。
俺の心はもう、眼鏡じゃないと動かない。
「…………」
「…………」
暫く頭を下げていると、緊張の糸が解けたかのような、柔らかい声が降ってくる。
「謝らないで下さい。……気持ちだけでも伝える事が出来て良かったです」
笑う一年を見て、ホッとしてしまう。
その後は、これからも先輩と後輩として仲良くやっていこうと話が進み、二人で階段のところへと向かう。
「済んだ?」
扉を開けると、壁に背を付けて腕を組む眼鏡が。
「そうだ、なぁめが…」
先に階段を下りる眼鏡に、この一年の事を紹介しようと思った。こいつ、結構 清掃活動とかも頑張ってやってくれてるし、成績だって申し分ない。
「え……」
きっと、次の生徒会メンバーになるべき人物の一人だ。
「新‼︎」
だから、ちゃんと眼鏡に言わないといけないのに
どうして俺の足は階段から離れてるんだ?
「っ‼︎」
体が浮いて、自分が落ちている事に気付いた時にはもう遅かった。
「いっ……」
次に目を開いた時、すぐ近くに眼鏡のメガネが転がってる。
フレームは曲がって、レンズもヒビが入ってる。
「………え…」
…………じゃあ、あいつは?
「……っ……」
ゆっくりと体を起こしてみると、俺の下に眼鏡がいる。
「は……え、なに……」
階段から……落ちた?
こいつは俺をかばって…………
「眼鏡……?」
どれくらい落ちたんだ……でもそんな高くないよな?……つか、なんでこいつは動かないんだ……
「……め、眼鏡……」
頭が混乱する。こんな事初めてだ。
こいつが返事をしないなんて、きっと俺をからかってるだけ……だよな……
「ひっ……」
頬に触れた瞬間、後頭部からゆっくりと流れる血。
「あ…、…あ……っ……め、眼鏡っ……」
こうなる事が最初から分かっていれば、
俺はこんなとこには来なかったのに
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