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俺はいいから
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「俺……っ、俺じゃな……」
階段の上にいる一年に必死に助けを求めたけど、俺の声は全く耳に入っていないようだった。
「おいお前っ‼︎」
「ひぃっ」
「誰でもいいから早く呼んで来い‼︎」
「あ、違うっ俺じゃないっ」
「っおい‼︎」
目の前の光景を少しでも避ける為に、一年は壁を伝ってそのまま下の階へと走り去ってしまう。
「くそっ‼︎」
立ち上がろうとしたけれど、左足首が腫れ上がっていて思うように起き上がれない。
助けを呼ばなくちゃいけない……早く誰か……
迷う暇なんて無かった。
大声で助けを呼ぶ。何度も何度も叫んで誰かが来てくれるのを待っていた。
でも、叫んだ声はこの場で反響し、吸い込まれるように小さくなって消えていく。
この時間、校内に生徒はほとんど残っていない。
職員室があるのは一階、しかもここから1番離れた場所だ。
「携帯っ、救急車……っ」
取り出そうとした時、教室の鞄の中に置いてきた事を思い出す。
「……っ、じゃあ眼鏡の携帯でっ」
横たわる眼鏡のポケットから携帯を取り出してみたが、落ちた時の衝撃で画面はヒビだらけで電源すら入らなくなってしまっている。
「なんなんだよくそがっ‼︎」
歩けない。助けも呼べない。
ここから一階まで、こいつを担いで行くのは厳しい。
それに頭から血が出てるこいつを無理に動かすのは危な過ぎる。
途中で支えきれなくなって、誤って転倒してしまったら……
その先を考えるだけで、怖くて震えが止まらない。
「眼鏡っ……」
どうする、どうする、どうしたらいい
「くそ眼鏡起きろって‼︎」
もし頭の打ちどころが悪かったら……このままこいつが二度と目を覚まさなかったら……
俺はこれからどうしたらいいんだ
「…………ぃ」
「‼︎」
眼鏡の胸に顔を埋めていると、微かだけど眼鏡が呟いた。
溜まりに溜まった大粒の涙がぼろりと頬へと流れる。
「……重……い」
ゆっくりと目を開く眼鏡と視線が合う。
「…………なんで、泣いてんの……」
俺を見るなり、眼鏡はクスリと笑い頬に手を添えてくる。
一瞬、本当に心臓が止まるかと思った。
もう駄目かと思った。
「んだその顔……すげえブサイク…」
「ゔっ、るせぇ……っ」
一瞬でも、もうこいつの声が聞けなくなるんじゃねえかと思うと、本当に怖くて、怖くて……
「いってぇ……なんだこれ血出てんじゃん」
上半身を起こして、後頭部に手を回すと、眼鏡の大きな手に真っ赤な血が染み渡る。
「う、動くなよ‼︎危ないだろ‼︎」
「は?平気だよこんなの」
「嘘つくな!血ぃ出てんだぞ‼︎」
立ち上がろうとする眼鏡を引き止めると、眼鏡はズイっと俺の方へ顔を近付けてきた。
目を細め、眉間にしわを作りながらじっと俺を見つめた後、額に強い衝撃が走る。
「いってえっ……!」
ペチンッ、と額を手の甲で叩かれ思わず仰け反り返ってしまった。
「何すんだてめえ‼︎」
「お前の方こそ平気じゃないだろ」
「……は?」
視線を下に落とした眼鏡は、腫れ上がる俺の左足首を指さした。
「め、眼鏡っ」
間を取る事なく、脇に抱えられ体が宙に浮く。
「やめろっ降ろせ!お前は動くなって!」
「早く看てもらわねえと駄目だろ」
「それはお前の方だろがっ」
「俺はいいから」
「っ……」
全然良くない。足元フラフラじゃねえかよっ
つかお前、メガネしてねえのに前見えてんのかよ
「悪い新……目の前の状況説明して」
「…………」
………………本当にこいつは…………
「30センチくらい進んだら……階段……10段くらい」
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