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君だけだ
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結局、日野がすぐそこにいるにも関わらず、あのまま最後まで達してしまった。
「いっちゃん‼︎ねえ‼︎ちょっと待ってや‼︎」
終わった後の僕を見て、あざ笑う水田くんの顔が忘れられない。
「ねえってば‼︎」
「っ、」
「いっちゃん、なんで俺から逃げるが?」
休み時間になる度に僕の教室まで来て、話があると言っては付き纏ってくる。
掴まれた腕が痛い。そこから日野の熱が移る。
「……なに」
「なにって、ちょっと話したいだけながやけど……」
顔が見れない。なんでそんな寂しそうな声してるの。
話って、なに……
僕は今、一番君に会いたくないのに。
「いっちゃん、えっと……」
「……口利かない約束でしょ」
「…え」
よりにもよって、今日、今、話す必要なんてないでしょ。
「その約束も守れないの?」
日野がすぐ近くにいるってだけで、君に助けを求めようとしてしまう。
聞きたくない、日野といると自分の事しか考えられなくなる。
「ちょ、あんなん半分冗談やろ?」
「冗談?」
こんなの八つ当たりだ。
「……そうだね。君にとっては遊び半分でしかないのかもね」
「そんな事思ってないけんど……いっちゃんどうしたが?なんかさっきから変やで?」
腹の底から苛つきが蒸せ返るようだ。
ちゃんと冷静に、ちゃんと笑って、日野に気付かれないように……
「っ言ったでしょ‼︎君といると僕の立場が危ういんだ‼︎ちゃんと役目を終えるまで、関わりを無くそうって約束したのに、それすらも君は守れないの⁉︎」
「い、いっちゃん」
「うるさい‼︎僕の名前を呼ぶな‼︎」
「っ、」
ちゃんと笑え、出来るはずなのに、なんで
「僕は我慢してるのに…っ…なんで君はそうやって簡単に僕との約束を破るの……」
日野といると、甘えてしまう。
弱い部分を見せてしまう。
守られたいだなんて思ってしまう自分が、酷く卑怯に思えて…………息が詰まりそうになる。
「……いっ………あのな、俺は約束大事にしたいって思いゆうで」
……なんで言い返さないの…
いい加減な事を、自分勝手な事を言っているのは僕なのに。
「あんたの事もちゃんと大事にしたいって思いゆうで。こんなに好きになったの俺、初めてで分からん事もいっぱいあるけんど……」
知ってる…そんな事知ってる…
「……好きって言わないで……誰かに聞かれたらどうするの……」
「……ご、ごめん」
どうしてこんな時は真剣に謝ってくるの。
君はなにも悪くないのに。
「俺、困らせてばっかやな……」
少し離れた場所から聞こえる日野の声。
「……けんど、俺も覚悟決まった。ちゃんと約束守る。勉強も頑張るな?」
優しくて、宥めるような、日野の声…。
「やき……」
振り向く資格も無い僕は、そのまま歩き出す。
手が震えている……本当に情けない。
「……学校外でなら、いい?」
「………………」
足が止まる。背中に投げかけられる言葉に心臓が跳ねた。
「気が向いたらでかまんき、学校の外でなら、話しかけてもいい?触ってもいい?」
「…………」
「学校の外でなら、好きって言うていい?」
理由も何も言わない僕を責めようともせずに、まだそんな事思ってくれるのか。
「誰かに聞かれんようにする。あんたにだけ聞こえるようにするき、やきちゃんと」
言葉が届く度に胸が痛む。
ジリジリと焦げ付くように僕の心を蝕む。
「そん時は、いっちゃんも俺の事好きって言うて…」
わざと僕には聞こえない声で言ったんだろうけれど、しっかりと聞こえていた。
「………………」
好き……好き…………好き…………
今すぐ君に伝えたい。叫びたい。
僕には君だけだ。
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