アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
舎弟関係
-
二人の間で『約束』を始めたのは俺からやった。
最初は確かに遊びのつもりでいっちゃんに近付いて、自分が満足すればいいやって思うくらいで…。
いっちゃんのさっきの態度。
どう考えてもおかしい。何かがある。
…………辛そうな背中やった。
一人で全部抱えようとしよる背中やった。
悩み事も、辛い事も、すぐに吐き出さす事が出来ん自分が情けない。
無理やり聞くのはいっちゃんは一番嫌う事やと思うし……
「ちわぁーーーすっ‼︎どうでナル、元気にしゆうかえ〜?」
やき、俺は自分で見つけないかん。
「っ、な、巨人っ……」
「あれぇ〜、お取り込み中やった?メンゴ!」
学校が終わって、その足でナルの見舞いに来た。
病室の扉を開けると、姫が大袈裟に飛び跳ねてナルから離れたところを見ると、タイミングは最悪やったらしい。
「あははっ、ナルの頭包帯ぐるぐる巻きやん〜」
「あ?」
「いい男が台無しやで〜」
けんど、姫もおるならこっちとしては都合がいい。
今日、あの一年から聞いた事を二人に確かめる事が出来る。
「チッ、でかい声出すなよ頭痛え」
ナルの機嫌は超悪い。
いっつも掛けちゅうメガネは無くて、通常の10倍目付きの悪さに磨きがかかっちょった。
「怪我って、そんなやばい感じやったが?」
「5針縫ったと」
ぶすっと隣で腕を組みながら姫が答える。
5針か……結構やばいやん。
「まぁ死ぬような怪我やなくて安心したわ」
「いっ‼︎」
ぐりぐりとナルの頭を撫でると物凄い力で手を払いのけられる。
「ってめえ、殺すぞクソが」
「……あ、や、すまん」
ギロリと睨まれ思わず後ろに引く。
「ってぇな……」
「はんっ、だっせぇーな。イイザマだぜ」
「新、んな事言っていいのかよ。後が怖いぞ」
というか、『クソが』って思っきし姫の口癖移っちゅうやん。
ナルが殺す言うたらほんまに聞こえてくるき怖いわ。
「まぁまぁ、そう喧嘩しなや。さっきは俺が悪かった。それより、今日は二人に聞きたい事あって来たがよ」
「聞きたい事?」
「ナル、そっち花瓶やで。俺はこっち」
「…………」
ほんまにメガネ無いと見えんがやな。
どんぐらい悪いが?言ったら怒られるけんど、ちょっと笑える。
「二人が階段から落ちた時の事聞きたいがやけんど」
っと、いかんいかん、ちゃんと真面目に。
これは大事な事や。
「なんでそんな事お前に言わなきゃならないんだよ」
「はいはいじゃあ姫に質問〜!」
「おい……」
ナルは中々口割らんやろうし。
それに一番今回の事について知っちゅうのは姫のはず。
「な、何を言えばいいんだよ……」
「階段から落ちた時の事」
「落ちた時……?」
「そう」
あの一年が言うた事と同じなら、俺は早々に手を打たないかん。
「誰かに背中を押されんかった?」
「え……」
この反応。つまりそういう事か。
「確かに……押されたような気はしたけど……」
はっきりやなくてもいい。
それさえ聞ければ十分や。
「ん。分かったありがとぉな」
「は……聞きたい事ってそれだけかよ?」
「おん。もう全部解決した」
確信を持つ為にはあと一つ。
「んじゃ、ナルは姫に癒されてなぁ〜」
すぐに病院を出て、家に向かう。
何度も桐島に繋がる番号を押し、メールを送った。
家の前で桐島の帰りをひたすら待った。
俺にとって頼みの綱はあいつしかおらん。
「龍、電話は一回すれば十分やって前にも言うたやろ」
3時間程外で待ちよると、タクシーから桐島が降りて呆れた顔をしながらこっちに歩いてきた。
「んで、あのメールはどういう事や」
「そのままの意味や」
相変わらずのちっさい身長。生意気な口調。
けんどこいつはれっきとした俺の舎弟。
上の言う事には何があっても従う。
それが俺と桐島の本来の関係。
「調べてほしい奴がおる」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
593 / 617