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僕を殺して
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生徒会役員の正式な交代式が3日後に迫っている中、日に日に今の生徒会には亀裂が走っていた。
月島先輩はすっかり人が変わってしまい、ボク以外の生徒には冷たく接する様になった。
望んでいた事が、現実になった。
「会長……最近どうしたんだろうね」
「さぁ…受験勉強と生徒会の仕事が忙しいからストレス溜まってるんじゃない?」
「会長……笑わなくなったね」
学校内では、月島先輩の変わり様はすぐに広まり噂が絶えなくなった。
「どうしたの?」
昼間、他の生徒が言っていた言葉が執拗に頭の中に残っている。
「いえっ……何も」
月島先輩は、ボク以外に笑いかけなくなった。
ボクの家に先輩は当たり前の様に来てくれる様になった。
当たり前の様に部屋に入り、当たり前の様にボクが用意していた青い首輪を付けるようになった。
最初と比べれば、それは大きな差だ。
「りゅう、こっちにおいで」
微笑む先輩が伸ばした綺麗な手。
胸がジクジクと痛む中、ボクはその手を受け入れる。
「……せんぱい……」
「ん?」
先輩の温かい腕の中で、しっかりと先輩の体にしがみ付くと、トクン、トクン、と心臓の音が聞こえる。
「苦しいんです……先輩……」
分かっているんだ。先輩がボクを見てくれていない事も。
「具合悪いの?大丈夫?」
優しいのも、心配してくれるのも、全部ボクの為じゃない事も。
「……名前……呼んで下さい……」
望んで手に入れたのに、満たされない。
バケツの底に穴が空いてる。先輩を好きになる度に、先輩がボクの中から消えていく。
「…………りゅう」
「っ違う‼︎……それはボクじゃない‼︎」
「………………」
目に飛び込んで来たのは、ボクを見上げる先輩の顔。
自分がどうして先輩を押し倒しているのか分からなかった。
どうして先輩の首に手をかけているのか分からなかった。
「っどうしてあいつなんですか……」
手の平から感じる先輩の血流の流れ。
もっと、もっと、力を入れれば先輩は死んでしまう。
そう分かっていても、月島先輩がボクを日野先輩を見るような目で見上げる限り、手に込める力はどんどん強くなってしまう。
「……どうしたの……ねえ…苦しいよ」
抵抗をしない先輩が、ボクのものにならないとはっきり言っているように思えた。
「何か気に触る事しちゃったかな?」
笑うな
「何でもしてあげるから。そんなに怖い顔しないで」
……笑うな
「……分かった。君がそうしたいなら」
……笑うな……っ……
「僕を殺していいよ」
「っ……」
「君にそれが出来るなら……ね」
先輩の手が、ボクの手の上から添えられる。
「せんぱっ……」
上から力が込められ、細い月島先輩の首がどんどん絞められていく。
「や……あ、駄目……嫌だっ……先輩っ」
「っ……は……」
「やだ…やだやだ‼︎先輩っやめて下さ」
涙が溢れて何度も必死に首を横に振っても、手を離そうと抵抗しても月島先輩はやめなかった。
「あ…うそ…嫌だ……嫌だっ……先輩っ」
「……ふふっ……」
下からボクを見上げる先輩が嘲笑う。
「っ嫌だ‼︎」
精一杯の力を込めて先輩から手を離すと、体がガタガタと震える。
怖くて、怖くて、怖くて怖くて怖くて怖くて……
……月島先輩が見れない。
「ゲホッ……ケホッ……」
「せ……先輩……」
咳き込む先輩の顔は、どこか余裕のある表情。
「……楽しかった?」
「…………え」
にやりと口角を上げる先輩が、ボクに手を伸ばす。
先輩の首には、首輪が押し付けられた痕がくっきりと残っている。
ボロボロと涙が溢れる中、先輩が親指で雫を拭ってくれた。
拭った涙を口に含みながら、ボクの唇にキスをする。
熱の無い、冷たいキス……。
「…僕の事……色々と調べてくれたんでしょ?」
………この人は、誰……
「そうそう…僕が足を踏み入れた世界には、ひとつ決まり事があってね」
…目の前にいるのは、ボクが欲しかった先輩じゃない。
「逃げ出したいって顔をしてるけれど、そんなの駄目だよ」
瞳の中には光が見えない。何も映ってない。
「君には、ちゃんとケジメを付けてもらわないと」
この人は誰………怖い……ボクの、ボクが欲しかった月島先輩はどこ……
「僕から逃げるなんて、許さない」
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