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抱き締める手
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言い放った言葉を聞いた桐島さんが僕を見つめながら笑うのが最後に見えた。
トン、と首の後ろを突かれ、視界が薄れていきやがて目の前が真っ暗になる。
今意識を失えばまずい事は分かっているのに、目の前の現実が遠のいていくように思えた。
首の後ろがズキズキする。
水田くんは、どうなるんだろう。
「…………っ…」
目を開けると、知らない天井が広がっていた。
視線を横に向ければ、部屋の壁に障子が連なる。
どこか見た事のある場所。
鼻につく、木の香り。
「…いっ」
体を起こすと、また首の後ろに痛みが走る。
少し頭がぼぅっとする。どうしてこんなところにいるのか、あの後何があったのか、思い出してみる。
「……あの…時」
そうだ……あの時 神崎さんに……
首の後ろを突かれ、意識を失ってしまった。
桐島さんからの応えを聞けないまま、水田くんがどうなったのか何も分からないまま、僕は気を失ってしまったんだ。
じゃあ、ここはどこだ?
どれくらい僕は眠っていた?
「起きたかえ?」
辺りを見渡していると、背後から桐島さんの声が聞こえた。
腕を組み、障子を開け僕を見つめる桐島さん。
「…………ここは」
「関東にある別邸や」
「別邸…………」
何だか体が重い。
……何日も眠っていたような気がする。
「立てるやったら、ちとこっち来てくれるか?」
「あの、僕はどれくらい眠って…水田くんはどこに……」
彼の名前を出すとあの冷たい目が僕を刺す。
そして桐島さんは顎で物を言い、ついてくるようにと誘導された。
立ち上がり、少し足元がふらつく中部屋から出る。
日野の本邸と同じような作りのこの家はやはり和の空気が漂っている。
廊下に出ると、窓から外が見えた。
綺麗な満月が窓枠にすっぽりと収まってとても美しかった。
「会長さん」
しばらく長い廊下を歩いていると、ある部屋の前で桐島さんが足を止めた。
入るよう言われ、ゆっくりと障子を開ける。
「っ先輩‼︎」
「‼︎」
すると、扉を開けた瞬間水田くんが僕の胸に飛び込んでくる。
手には包帯。涙を流しながら、ぐしゃぐしゃになった顔で抱きつく水田くんに少し驚いてしまう。
「……み、水田くん……」
無事だった、のか……
「……ゔぅっ、ゔ、月島先輩……」
良かった……何も、されてない、よね?
「桐島さん……」
泣き崩れる水田くんの背中を摩りながら、後ろに構える桐島さんの方を向く。
「言うとくけんど、そいつの事を許した訳やない」
「……はい」
「二度目は…」
「分かってます」
少なからず、今回の事は目を瞑ってもらえた。
……水田くんも、幸い指の鬱血のみで済んだ。
「ぜんぱい……」
「泣かないの…ほら、指見せて」
膝をつく水田くんの視線の高さまで前屈みになり、ボロボロと涙を流す彼の頬を撫でる。
手に巻かれた包帯を手の平で包み込むと、水田くんは安心し切った顔をして僕に抱きついてきた。
「会長さん」
数分後に、桐島さんが壁を数回指の背で叩く。
「今、着いたみたいやで」
詳しい事を聞かなくても、その言葉の意味は分かった。
「悪いけんど、俺はそいつの面倒見ないかんき。こっからは会長さん一人で行ってや」
水田くんの首根っこを掴んで、僕から引き離すと桐島さんは別の部屋に向かってしまった。
そして、僕が行くべき場所へ指をさされ、そのまま長い廊下を真っ直ぐと歩いた。
家の中はとても静かだった。
別邸と言えど、もっと人がいても良いはずなのに……
歩き続けると、正面に見覚えのある青い龍の絵が入った大きな障子が見えてきた。
これは、僕の肩にあるものと同じものだ。
恐る恐る、扉に手をかけ開く。
すると、開いた隙間から手が伸びて、あっという間に部屋に引き寄せられた。
大きな体に包まれて、そのまま床に倒れこんでしまう。
「…………ひ…の…」
「…………」
抱き締める手が言ってる。
「…日野…………」
沢山走って、汗をかいた体。
「日野……っ…待っ」
顔も見れないまま、両手で頬を包まれ唇が重なる。
「ん、っ……んん⁉︎」
苦しくて息も出来ないような乱暴なキス。
腕を掴む力が強くて痛い。
「は、っ……待ってっ日野……‼︎」
唇が離れ、首に移動する。
シャツをたくし上げられ、そのまま日野の手が肌に触れた。
何も喋らない日野が、怖い……
「日野っ……ひ、のっ」
僕はちゃんと君に話さなくちゃいけない事があるのに
「っ‼︎……日野‼︎」
思い切り突き飛ばすと、その拍子に日野のシャツのボタンが飛んだ。
尚も僕を見ようとしない日野。
「………………ぇ…」
そして彼の体を見た瞬間、僕は言葉を失った。
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