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新×眼鏡…⁉︎
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まぁ、俺がこの状態の時に新が何か仕掛けてくるかなとは思っていた。
一応想定の範囲内。だったけど……。
「っは……おい零すなよもったいねえ」
何が楽しいのやら……また口移しでコーヒーを飲まされ、その度に俺の反応を見て新はニマニマと笑っているようだった。
喉が死ぬほど痛い。口の中最悪。
喉の奥に残るイガイガが本当に駄目だ。
新のくせに、一丁前に俺の事縛りやがって。
しかもこれ適当に結んだな……ガチガチじゃねえかよ。
「眼鏡くーん?あとちょっと残ってんぞ〜」
新が今どんな顔してんのか分かんねえけど、すっげえ腹立つのは分かる。
「お前なぁ。人が嫌がる事はしちゃいけないって習わなかったのか?」
「それお前が一番言っちゃいけない事だぞ」
「俺はお前が喜ぶ事しかしてないけど」
「はあ⁉︎ふ、ふざけんなよ‼︎嬉しいとか思った事一度もねぇわ‼︎」
あ、この声は取り乱してる時の声だ。
こいつ顔だけじゃなくて声も分かりやすいのな。
「俺こんな事してる場合じゃないんだけど」
「なんだよ、用事でもあるのか?」
俺は一刻も早く新しいメガネを買いに行きたいんだよ。
あれが無いせいでろくに外も出歩けない。
視界がずっと磨りガラスが三重になって揺れてるみたいでイライラする。
何も見えねえ。
「俺より大事な用があんのかよ…」
「そう言われると『うん』って言いたくなる」
「っな…」
新が何をしようとしてるのかは知らないけど、正直今はこんな事をしている場合じゃない。
いやほんとは遊んでやりたいよ。
でも今は無理。物理的に無理。
「駄目だ‼︎まだ全部飲んでねぇだろが‼︎」
「もうお腹いっぱい。それ以上飲んだらほんとに死ぬ」
と、少し冷たい対応をして返す。
確かにこれ以上飲んだら頭馬鹿になりそう。
けど、幸いな事に新が俺に飲ませてきたコーヒーは微糖だ。
わざとなのか、間違えたのか……。
俺に本気で嫌がらせをしたいならブラックにしたはずだ。
「き、嫌いな物の克服も大事なんだぞ」
俺が怒ったと思ったのか、焦る新の声がする。
嫌いな物の克服ねぇ。
「じゃあ、それ全部飲んだらお前は何してくれるの?」
「っへ…」
「嫌いな物を克服させるだけじゃないだろ?お前の目的は」
「別に…それ以外の理由…わっ⁉︎」
ぐいっと、両足で新を捕まえ引き寄せる。
視界の半分が金色になったという事は、顔はすぐ近くにあるって事でいいよな。
「正直に言えよ」
囁いてやるだけで、俺はお前から聞き出せるよ。
「っ……俺は、お前を泣かしてやろうと」
ああ、なるほど。そんな事を考えてこんな嫌がらせを。
馬鹿だなぁ、さすがの俺もコーヒーくらいじゃ泣かないのに。
「なら、全然駄目だな……新」
「っ……」
息を吹きかけると、体の上で新が震えたのが分かる。
すぐ近くでコーヒーの香り。
「何が駄目なんだよっ……」
「色気が無い」
「はっ…⁉︎」
少し顎を上げ挑発するかのように言ってみる。
「もっとさ、俺が泣きたくなるくらいにエロく…」
「その手には乗らねえ‼︎」
なんだよ。まだ言い切ってないだろ。
……駄目だ調子が乗らない。
いつもは新の反応見ながらからかえるのに、今は新が三重に見える。しかもボヤけてるし視点定まんねえ。
これはいよいよまずいな。
「話逸そうとしても駄目だぞ。今日は俺の方が上なんだからな」
「上ねぇ……」
状況に対しついため息が出る。
ろくに目が見えてない俺に対し少し酷過ぎやしないか?
もっと労ってくれてもいいのに。
「……あ」
……上、そうか上か。その手があった。
「なぁ新、正直に言うけど今のお前のやり方じゃ絶対俺は泣かないぞ」
「えっ⁉︎」
だってそれ微糖だし。
ブラックだったら泣いてた。……かもしれねぇ。
「お…俺の計画がっ……」
「くくっ……」
「何が可笑しいんだてめえっ」
いや、そんなショック受けた声出されても…。
というか、こんな必死なお前久々に見るわ。あ、見えてないけど。
「そんなに俺を泣かしたい?」
「当たり前だ…」
やばい。今超顔見たい。
けど、確かにこれは新しいメガネ買いに行くより大事な事かもしれない。
単に楽しめそうなだけだけどな。
「じゃあ教えてやるよ」
「……何をだよ?」
「俺がいつもお前にしてる事をそのまま俺にしてみな」
「は?……なんでんな事…」
「飲み込み悪いなぁ。分かるだろ?俺がお前の立場になるのがどれ程屈辱的か」
「……‼︎な、なるほどっ……」
はっ、…………チョロい。
「お前言ってたもんなぁ?いつか俺を抱いてやるって」
「はんっ、自分で提案しといて後で泣くなよ」
「泣かせる気で来いよ」
新に火が付いたとこで、さてどうしようか。
手は使えねえし、視界も悪い。
「お前まだ缶コーヒー持ってるだろ、それとりあえず置け」
「お、おう」
少しは楽しむ事が出来るかな。
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