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堕天使は笑う
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結局、金曜日は成海も新も
学校へは来なかった。
あの事ばかりが頭をチラついて
新の傷付いた時の顔が忘れられない
もう声を掛けてくれないかもしれない。
もうあの笑顔を見せてはくれないかもしれない。
僕の事、嫌いになったかな?
でも、そうなっても仕方のない事を
僕はしてしまった。
今更、許してなんて言えない
僕自身も、このままでいいんだ。
また、前と同じ日々が戻ってくるだけだ。
新の居ない日常が・・・
「っ・・・・」
目を開けると、いつもの朝の生徒会室の中。
ああ、今朝は来てすぐにそのまま
うっかり寝てしまったのか。
成海が休んでいた分を取り返そうと
あれから家でも作業をしていたからな。
「・・・」
成海も、僕の事をどう思ったのだろう。
成海が、あんなにも感情的になるなんて
「僕のしている事は間違っているのか?」
机にあった資料をつい、くしゃっと
握ってしまった。
こんなの、僕らしくない。
「・・・・」
その時、生徒会室の扉をノックする音が聞こえると共に
背の低い影が見えた
「・・・新?」
「失礼します」
椅子から立ち上がると、扉が開き
生徒が1人入ってきた
「会長?」
「・・・舞園」
「どうしたんですか?そんな顔して」
「いや・・・」
新かと思ってしまった。
僕は肩の力を抜いてまた椅子に腰を掛けた
「会長ー、先週渡した企画書
ちゃんと考えてくれましたか?」
「ああ。」
険しい顔で僕を見つめるのは
この学校の演劇部部長
舞園 立花(まいぞの りつか)
黒髪のツインテールに
赤い眼鏡が良く似合う女の子だが、
性格が少し荒く、この僕でも
頭が上がらない。
「会長?なんだか顔色悪いですよ?」
君と話をする時はいつもそうだよ。
「いや、その件はもう少し検討させてくれ。
今は生徒会もメンバーが揃っていないから。」
「また役員の子辞めさせたんですか?
もういい加減にして下さいよ。
去年同様、生徒会の参加不参加で
来年の演劇部の入会員の人数が
決まってくるんですから!」
舞園が僕の机に手をついてそう訴えてくる。
さすが部長。よく通る声で
先程までの眠気が一気に覚めたよ。
「まだ生徒会の仕事も山積みでね。
今年はそちらに手を貸す暇が無いかもしれないんだ」
「はぁー。大体、それは会長と
副会長が残り2名の生徒会役員を
さっさと決めないからでしょ。
この間、やっと副会長が1年生から
書記を推薦してくれて、人数が
揃うと思っていたのに。」
そう言うと舞園は頬を膨らませ
僕を睨んでくる。
「そうだね。でもやっぱり、
僕と成海で仕事は終わらせれるし
残りの2人はこれからゆっくり選ぶよ」
ため息混じりにそう言った時だった
「ダメですよ!会長!」
「え・・・」
舞園が、机を越して僕の目の前に来る
その勢いに少し、引き身になってしまった。
「会長はいっつもそう。
僕と成海でなんとかなる〜。って。
なんとかなってないから
こんなに仕事が溜まってるんですよ!」
バンっと、机にあった資料を
舞園は強く叩いた。
「これは成海が居ない時の分だよ、
今日中には僕が・・・」
「それ!それですよ!
僕が〜。僕が!って!
少しは周りの人に頼って下さい!」
ああ。いつにも増してこの子は
ピリピリしてるなあ。
「会長だって1人の人間ですよ?
そんないくつも手や足や頭が
ある訳じゃないんですから!」
「う、うん」
「その証拠に!その顔色!!
あと、今日の会長はなんか元気ないし、覇気がない!!
心ここに在らずって感じですよ!」
「え?」
キリッとした目付きで
舞園が僕の額に指を指す
「自分に無いものは他の人から
貰うしかないんですよ?
必要としているものをきちんと
自分から求めないと、
全部自分で解決してたら
そのうちほんとに会長壊れますよ?」
何を言っているんだ?
必要としているもの?
そんなのあるわけない。
今までは僕一人でもやってこれたんだ。
欠けてるものなど、あるはずがない
「とにかく、明日までには
あの企画書、ちゃんと返事をして下さいね。
絶対、今年も参加して貰いますから。」
ふんっ と言い切った舞園は
ようやく僕の机から降りて
生徒会室から出て行こうとした
「・・・必要としているもの」
舞園の言ったその言葉が、胸に響いて
何故か僕は自然と笑みが零れた
望んでも、いい事なのだろうか。
「舞園」
僕の中に欠けているものなどない。
「なんですか?」
でも、欠けてしまったものならある
「その話、今日中に返事を出すよ」
「ほ、ほんとですか!?」
取り戻してそれが元に戻るなら
「ああ」
僕は、求めてみるよ
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