アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
開幕の時
-
まぁ、事がそうなってしまったら
今更後戻りは出来ない。
ソファにポツンと置かれた俺の本来の姿。
小人の衣装を横目に、そのまま生徒会室を出た
「歩きづれぇ・・・なんだよこの靴」
スカートは歩く度に足の間に入ってきて鬱陶しいし、
靴はそんな高さがあるわけでもねぇのに
履き心地は最悪なもので、
つま先が早くも痛くなってきた
「だぁーっ!しゃらくせえ!」
イライラしてしまった俺は
靴を脱いで、スカートを太ももまで上げて
そのまま走ってホールへと向かった
「裸足になればこっちのもんだ」
もうなんでもいいよ!
白雪姫でもなんでもしてやるよ!
なんて決意をしておきながら、
俺の目はきっと死んでいる
けどまぁカンペはあるし、
なるべく客席を見ねぇようにして、
あとは気合いでなんとか・・・
ミスを犯して、最悪な事態にだけはならないように
いきなり託された重大な役の事を考えながら
廊下を猛スピードで駆け抜けた
「ぬぉわっ!!」
その時、廊下から階段へと曲がろうとしたら
階段側から来ていた誰かにぶつかってしまい、
そのまま後ろに倒れそうになった
「っと・・・」
そんな俺の背中に手を回して、
ぶつかった相手に抱き留められてしまった
「・・・っ、わ、わりぃ」
顔面がジンジンする中、
顔を見上げてそいつを見ると
「大丈夫か?」
「・・・・は、い?」
腰に手を回したまま、俺の顔を覗き込んでくる
オレンジ頭の、見慣れない制服を着た
「・・・きょ、巨人」
くそ背が高えっ!!
「ははっ、なんぞ巨人って(笑)」
ケラケラと笑うそいつから
体を離すと、そいつは俺の事をじっと見つめて来た
「な、なんだよ・・・」
「ん?いや、可愛い子とぶつかってラッキーやなあって思うて」
にやりと笑いながら、
何故か俺のケツをスリスリと触ってきた
「さ、触んなっ!!」
「っと、・・・そんな急に突き飛ばさんといてや」
訂正しよう・・・・こいつは変態だ。
俺の勘がそう言ってる。
ケツ触ってきたし古臭い変な喋り方だし、
なによりオーラがうぜぇ
「って!こんな事してる場合じゃねえっ!」
「お、おいっ嬢ちゃん」
「嬢ちゃんじゃねえ!くそ変態野郎が!
助けてくれてありがとよじゃあな!」
俺を引き止めようとした変態を無視して
俺はその場からピューと立ち去った
まぁ一応礼は言ったし、
もう会うこともねぇだろうし・・・
そんな事を考えて、
また頭を演劇へとシフトチェンジさせる。
「えっと最初の台詞って、なんだっけ?」
必死に大崎が最初に言ってた台詞を思い出して
頭の中でイメージする
「大丈夫、俺なら出来る!
俺なら出来る!俺なら出来る!」
走りながら何度もそう呟いて
ようやくホールの舞台裏へと辿り着いた
「書記君!すぐに始まりますよ!」
着くなり、ピリピリしたオーラを纏う部長さんに肩を押さえつけられ
そのまま舞台の入り口へと立たされた
「ちょっ!まだ心の準備がっ」
緊張で一気に心臓がバクバク唸って
手が震えて来た
そっと客席を覗き込むと
開演を待たされた事にイライラしているのか
客はザワザワしていて煩かった
「む、無理だよこんなっ」
想像以上に、人が多い
こんな中に、ついさっき代役が決まった俺なんかが
出て行って大丈夫なのか??
「新」
もう心臓の音はバッキュンバッキュンと
異様な音に変わっていて
舞台への一歩が踏み出せなかった時
後ろから眼鏡が声を掛けてきた
「な、なに・・・」
「力抜けよ。そんなんじゃ、すぐに転ぶぞ。」
そ、そんな事言ったって!
「で、出来ねえよっ・・・」
「・・・・」
胸に手を当てて、なんとか落ち着こうとしたけど
本当に緊張で震えが止まらないし
体もガチガチに固まって動かない
「新・・・」
そんな時、いきなり眼鏡が後ろから抱き締めてきた
「・・・え」
「行ってこい」
そして耳元で、何かを呟いては
後ろから俺の髪にキスをしてきた
「・・・な、なに聞こえな」
「ほら、客が待ってんぞ」
聞き返そうとしたら、
眼鏡は俺の背中をトンっと突いて
その拍子に足が一歩前へと動いた
「・・・・・」
さっきまで、緊張で体が震えていたのに
何故かピタリと止まっていて
「・・・・眼鏡・・・」
聞こえなかったってのは嘘で
ほんとは、さっき眼鏡が言った事は
ちゃんと聞こえていた
“ 俺が居るから心配すんな ”
「・・・・・っ!!」
バチンっと自分の頬を両手で叩いて
気合いを入れ直した
何かわかんねえけど、
あいつの言葉に、すげえ安心した
本当に、大丈夫な気がしてきた
「よしっ」
やがて幕が上がり、
ライトが照らす中心へと俺は足を進めた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
132 / 617