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優しい人
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俺が眼鏡の事を好きと言った後
会長は急に俺を抱き締めてきた
「新・・・・好きだったよ」
辛そうな声で、切なそうにそう呟く
どこか優しくて、暖かい会長の声に
あの時の気持ちを思い出しては
胸がぎゅっとなった
「・・・・俺も」
多分会長は、俺の為に
ワザとそう言っているんだと思った
「・・・・好き・・・でした」
俺にこれ以上、気持ちを押し付けないように
これ以上俺が・・・苦しまないように
「新・・・・」
その時、会長が少しだけ体を離したかと思えば
俺の額にキスをしてきた
「え、あっ、会長っ?」
びっくりして、顔が熱くなる
「ふふっ・・・・・顔、真っ赤」
「・・・・っ」
その時の会長の笑顔は、
前に一度、同じように俺の額にキスをした時の顔で
「ありがとう。新」
優しく、切なそうに笑っては
また強く俺を抱き締めてきた
ありがとうと言った後、
会長はまた何度も好きだったと呟いた
「ほんとに、大好きだった・・・」
きっと、本当は今でも俺の事を
好きだと思ってくれているのに
ワザとその言い方をしては、
必死に気持ちを押し殺してる
「・・・・・はい・・・」
なんで俺は、こんなに思ってくれる人が
目の前にいるのに
あいつじゃないと、
駄目だと思ってしまうんだろう
「・・・会長」
あいつなんか最低なのに
俺をあっさりと捨ててしまったのに
「新・・・・」
そんな事を考えていると、会長が俺の名を呼んで
俺は顔を上げては会長の顔を見つめた
「成海の所へ、行っておいで」
「え・・・」
笑ってそう言っては
「きっと、大丈夫だから」
会長は俺の頭を撫でてきた
「・・・で、でも・・・」
「成海に気持ち、伝えるんでしょ?」
そう言ってくれたけど・・・
「・・・・・っ」
今更好きと言って、どうにかなるのか?
あいつを目の前にして
俺はちゃんと言えるのか・・・
そんな不安がまた俺を襲う
「新、大丈夫だよ」
「・・・っ・・・はい」
何弱気になってんだ俺・・・
会長がせっかく背中押してくれているのに
今更、傷付くのが怖くて逃げるなんて事
「会長・・・」
「ん?」
そんなのしたくない
俺の為に、傷付いてる人がいるのに
俺が傷付くのを怖がってどうするんだ
「ありがとうございます」
頭を下げて会長に礼をした後、
俺は生徒会室から出ようとした
「新」
その時、会長に呼び止められて
俺は扉の前で足を止めた
「・・・は、はい」
振り向くと、会長はにこりと笑ってて
「これからも、仲のいい先輩として
新の側に居てもいい?」
どこか切なそうにそう言った
その笑顔に、また胸がぎゅっとなって
会長のその言葉を聞くと
急に、目の奥が熱くなった
「そんな・・・こと」
窓から差し込む光に照らされた会長が
少しだけ、泣いている気がした
「あ、当たり前じゃないですか」
つられて俺も、涙が出そうになる
「ふふっ・・・ありがとう・・・」
ありがとうなんて、寂しそうに言うから
「・・・会長・・・」
「ん?」
会長の優しい声と優しい手の温もり
「・・・新?」
優しく俺を呼んでは、また優しく微笑む
「会長は本当に、優し過ぎます」
「・・・え?」
酷い事を俺にしたと言ってきたけど
それで何度も俺に謝ってきたけど
「会長は、全然酷くないですよ」
あったかくて、優しさの塊で
その全部で色んな物を溶かしては
気持ちを和らげてくれる
「あいつにも、会長を見習って欲しいくらいです!」
「・・・・・・そんな、こと・・」
「俺、会長を好きになって良かったです」
にこっと笑ってそう言うと、
会長は少し下を向いて何かを呟いた
「・・・・・僕も・・・」
「・・・え?」
聞こえなくて、もう一度聞こうとしたら
会長は顔を上げて、また優しく笑った
「新を好きになって・・・良かったよ」
「・・・・っ」
優しく微笑む会長に、また俺も笑い掛けては
そのまま、俺は生徒会室を出た
廊下に出ると、今までの会長の顔が
頭にいっぱい溢れてきて
扉を閉めては、その前で足が止まってしまった
「・・・・っ」
優しさで俺を包み込んでくれた
俺の好きだった人
俺の 初恋の人
「・・・・っ」
少し零れた涙を拭い、
そのまま生徒会室を離れた
必死に足を走らせては、
あいつが行きそうな場所を巡る
今、俺がしなければいけないこと
伝えなきゃいけないこと
二度と同じ事を繰り返さないように
あいつに
今度こそ、ちゃんと俺の気持ちを伝える
「・・・・っ・・・・成海」
ずっと俺を追い掛けてくれたあいつを
今度は俺が追い掛ける
「・・・成海・・・」
会いたい
抱き締めたい
「・・・っ・・・なる・・・み」
名前を呟くだけで、また涙が出そうになる
「・・・っ!!」
グッと堪えては、また走り出した
「・・・どこだ・・あいつ」
そして、あいつが居そうな場所を
探しては校内を駆け回った
この時間なら、あいつはもう来てるはずだ
「・・・あいつの・・・行きそうな場所」
その時
頭に、その場所が一つ浮かんだ
「・・・・保健室」
その場所が浮かぶなり、また足を走らせる
全力疾走して、冷たい空気を喉が突き抜けて
息が上がる
「・・・っ・・・はぁっ・・・」
一分でも、一秒でも早くお前に会いたい
「はぁっ・・・ぅ、っはぁっ・・・」
会って、好きだって言いたい
「成海!!」
保健室に着くなり、扉を思い切り開けた
「・・・・・・え」
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