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貪欲な思い
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先々週、僕は初めて男を抱いた
望んでしたことではなかったけれど
日野はそれを僕の為だと言った
新に対する抑えられない僕の気持ちを
少しでも紛らわせる為に
誰かと肌を重ねれば、少しは楽になると。
でも少しも楽になんてならなかった。
僕が日野を抱いた次の日、
新はきっと成海に抱かれた。
頭の中で、日野を新だと思って
一瞬でもその感覚を味わおうとしてしまったけど
そんな事をしても、やっぱり虚しいだけだった
「か、会長・・・?」
今、僕の目の前には好きな人が居る
僕が少しずつ近付くと
新は不思議そうに僕を見つめたまま
その場に留まっている
警戒なんて全然してなくて
あの時言った僕の言葉を信じて
新は僕の側に居てくれてる
だけど
「もう・・・無理だよ」
「・・・?」
またこうやって二人きりになってしまって
普通に接して居たいのに
冷静で居たいのに
「む、無理って何がですか?」
「・・・・・・」
僕が目の前に来ると、
ようやく新は少しだけ警戒心を表し始めた
「お、俺、会長の為ならっ
どんな事でも頑張ってみせますよっ」
「・・・・・」
僕の言った“ 無理 ”と言う言葉を
新は別の意味で取ってるようだね。
「違うよ。君はよく頑張ってくれてる」
新の反応を見て、僕は少し笑みが零れた
「??」
「新」
そして、また一歩近付くと
新は後ろに下がった
その瞬間、資料室の棚に新の背中が当たった
「か、会長?・・・」
どうしたんですか?というような顔で
僕を見上げてくる
僕を“いい先輩”として見ている瞳が
「辞めるよ」
「ふぇ?」
僕は棚に手を付き、新の逃げ道を塞いだ
辞めると呟くと、新の目の色が変わる
それでも、新は逃げようとしないし
抵抗する様子も無い。
「僕はね。新の笑顔が大好きだよ」
「え?」
だから、君にはいつまでも笑って居てほしい。
君が成海と一緒に居て
幸せだと感じるなら僕も嬉しいよ。
「でも、もう見れない・・・かな」
また、僕は後悔してる。
君に振られた時、なんでいい先輩として。
だなんて言ってしまったんだろう
言葉でどんなに優しくしても
君が成海に向けて笑う度に
心は荒んで、貪欲な思いが溢れてゆく
「か・・・かい・・・ちょう?」
「・・・・ごめんね」
日野を抱いたあの感覚を、君と味わいたい
「は、離れて・・・下さい」
「・・・・」
日野・・・君が僕に与えた打開策は
逆に僕が抑えていたものを
開けてしまう鍵になってしまったんだよ
「新・・・」
だから、もう無理なんだよ。
「いい先輩で居るのは、もう辞めるよ」
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