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矛盾
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「・・・・・」
秋人君の家に来ています
そして僕は今、台所で包丁片手に
目の前には僕の大嫌いな人参が
白いベッド(まな板)の上で堂々と横たわっています
買い物が済むとまた家にお邪魔させて貰い、
さてご飯の支度をしますか。と秋人君が言ったけど
さすがに毎回秋人君に全て任せっきりは
どうも自分が許せなくて
何か手伝いますと言ったら
僕はこの人参を任されてしまった
秋人君はその他の下準備をせっせと進めていて
僕はかれこれ15分。
この人参と睨み合いを続けてる
「・・・・乱切り・・・」
秋人君には、一口大の乱切りにしてって言われた
いや、切ろうとはしたんだよ。何回もね。
僕が何もせずただこの人参と15分間も
見つめ合ってるワケないでしょ・・・
「はぁーーー・・・っふぅっん!!」
大きく息を吐いて、
僕はまたこのオレンジ色の物体に包丁を添え
全体重と僕に出せる全ての力を包丁に乗せた
「・・・・・・・っぅぐ」
「・・・・」←人参
「・・・・・・・」
さて。ここで一つ大きな問題が出来た
「・・・・な、なんでっ」
なんでこいつ(人参)は切れない!?
「・・・くっそ、人参にまで馬鹿にされるなんてっ」
いや、僕の力が弱過ぎるんじゃない。
そして技術力の問題でもない。
確かに僕は中学校の頃
家庭科と体育の評価は低かった。
だけど、流石に人参が切れないって
男としていや人間としてありえない
それはもう僕のせいじゃない
包丁だ・・・きっとこの包丁が悪いんだ
くそっ、秋人君め
ちゃんと包丁は定期的に研いでおいてよ
全然人参に包丁が食い込まなかったから
きっと切れ味が悪いと思った僕は
包丁の刃に指を滑らせて切れ味を確認してみた
「・・・・・・!」
ふふっ・・・なんと言う事でしょう
「痛っ・・・」
めちゃくちゃ切れ味抜群だったよ(泣)
「・・・ど、どうしよっ血が」
最悪だ。何やってんだよ僕は
自分で指を切るなんて
人参もまともに切れなくて
おまけに指を切るなんて(二回目)
「忍〜、人参切れたか?」
「っあ!いえまだ完全体です!」
「え?」
「・・・・・」
い、いきなり後ろから声を掛けないでよっ
「なんで手ぇ隠してんの?」
「ふあっ!?べ、べべ別にっ!」
僕が不自然に手を後ろに回して隠したから
秋人君は、なんだぁ?と目を細めて
僕の事を見てくる
ど、・・・どうしよう
指がドクドク言ってる・・・
結構深く切っちゃったのかな
「忍。手ぇ見せて」
「あっ、え?やっ・・・でも」
「いいから見せて」
「・・・・・・はい」
物凄い顔でそう言われたから
僕は渋々切ってしまった方の手を出した
「やっぱ指切ってんじゃん」
「・・・はい。すみません」
「俺んちの包丁めちゃくちゃ切れ味いいから、
気を付けろって言っとけば良かったな」
「・・・・・・」
いや、ちょっと待ってよ。
矛盾してるよその話。
僕は何度人参を切ろうとしても
あいつ(人参)に包丁は1ミリも食い込まなかったんだぞ
なのに僕の指はこんなあっさり
サクッと切れてしまった。
なんなのこの変な矛盾は・・・
切れ味いいの?悪いの?僕が悪いのか?
もう悲しい。悲しくて涙が出るよ
くっ。と涙を堪えて僕は目を閉じた
秋人君。
この家の包丁から僕は嫌がらせを受けてるよ
「ん。」
って、あれ、なんで指がぬるってしたの?
そしてなんで少し吸われてるの?
「・・・ん?」
「・・・・・・へ?」
ぱちっと目を開けると、
僕の指を咥えてこちらを見る秋人君
「あ・・・秋人、君?」
ちょ、ちょっと待って・・・何してんの
「よし。消毒終わり!」
そして何故ドヤ顔
「ちょっと待ってろ!今絆創膏持ってくっからよ!」
「・・・・ふ、ふぁい」
「あっ、心臓より高い位置に指上げとけよ!」
「へ?」
秋人君はマブイ笑顔を僕に向けた後
そのまま絆創膏を取りに台所から出て行ってしまった
「・・・・・・っ」
足の力が抜けて、体がズルズルと
床に崩れ落ちてしまう
「ゆ、指を・・・指っ・・・なめ・・・」
今になって、ボンっという音を立てて
体の熱が上がっていく
「へ、平気でこんな事っ・・・」
切った指を言われた通りに
心臓よりも高い位置に上げたけど
やっぱりまだドクドクしてる
「っ・・・お、落ち着け・・・」
大丈夫だ。ドクドクしてるのは
これは指を舐められたから
慣れてない事をされたからだ・・・
「・・・落ち着け忍っ・・・絶対違う・・・」
心臓がこんなに煩いのは
絶対に、秋人君に対してじゃない
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