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もうやめて下さい
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秋人君に目を閉じてろと言われ
僕がゆっくり目を閉じると
それと同時に周りの不良達が
秋人君に群がって行く声や音が聞こえた
「うっ・・・ヒック・・・」
喧嘩が始まって
もうどれくらい経っただろうか
次々に人が倒れて行く音
ガラスの様な物が割れる音
「立ておらぁあ!!」
人と人が殴り合う音が耳に響いてくる
「・・・はっ、こんなもんかよ」
でもほら、秋人君は余裕そうだっ
秋人君ならきっと大丈夫
「がはっ」
絶対に、前みたいに勝ってくれる
「菅原ぁあああ!!」
「っ、!」
忍、終わったぞって
きっと前みたいに
笑ってそう言ってくれる
「ヒッ、ク・・・っ、あき・・・ひとくん」
目を閉じたまま、そう願った
だって聞こえてくるのは・・・
苦しそうな声を出してるのは
周りの不良達だ・・・
大丈夫、大丈夫だ・・・
秋人君は強い、負けない
絶対負けたりしない
「菅原、あんま失望させんなよ。」
「っ・・・く・・・そが」
!?
聞こえてきた声に
僕は体をビクっとさせた
そのあとすぐに、パリンっという音が聞こえ
体がまたガタガタ震え出した
「・・・っ・・グズ」
大丈夫、大丈夫、大丈夫
やられてるのは秋人君じゃない
「ははっ、もういっちょいくか?」
誰かがそう言った後すぐに
また、パリンっという音・・・
心臓がドクドクと早くなる
「菅原ぁ、まだやれるだろ?」
「・・・・・っ」
秋人君の声が聞こえない
「あ、あああきひとくん・・・」
秋人君の声が聞こえなくなって
更に怖くなった僕は目を開けようとした
「忍!」
「!?」
その時、秋人君が大きな声で僕を呼んだ
「ヒック・・・グズ・・・」
「大丈夫だ」
「っ・・・ふ、ぅえ・・・」
「大丈夫だから」
ゆっくりと、ゆっくりと目を開け
顔を上げて秋人君の方を見た
「!・・・ぁ、あ・・・」
目の前の光景を見ると
顎がガチガチと震え出した
視界に入って来たのは
後ろから腕を押さえつけられ
一方的に殴られてる秋人君の姿
地面には無数のガラスの破片
「・・・ひ、ひどい・・・」
さっき聞こえてきたパリンっという音は
店のカウンターに置いてあった
ワイングラスやガラスの灰皿を
秋人君の頭に叩きつけてる音だった
「・・・っ・・・」
「なんだあ?さっきまでの勢いどうしたよ?」
また一人の不良が
ぐったりとなる秋人君の頭を掴んで
頬を思いっきり殴った
「かはっ・・・ッ」
秋人君の口から地面に飛び散る赤い血
一回の瞬きも出来なくて
僕の頭で思い描いていた秋人君の姿が
だんだんと壊れて行くところを
僕はただ見つめる事しか出来なかった
「ッ、・・・はぁっ・・・うっ」
「なんだよ。まだ足りねえってか?」
「ぐあっ」
や、やめてよ・・・
それ以上やったら、秋人君死んじゃうよ!
「や、やめて下さいっ」
「あ?」
勝てる訳ないじゃないか!
こんな大勢相手に一人でっ
「も、もうやめて、下さいっ」
僕の隣で秋人君が殴られてるところを
笑いながら眺めていたこの氷崎という人に向かって
僕は必死に訴えた
「お前、今俺に指図したな?」
「ひっ」
胸倉を掴まれ、鋭い目つきで睨まれる
怖い、怖くてまた涙が出る
体もガタガタ震えて止まらない
「お、おおお願いじまずっ」
それでも必死で訴えた
声もきっと震えてるし
言葉だってちゃんと言えてるか分からない
「やめで、ぐだ、ざいっ・・・ゔっ」
「・・・・」
殴られるのも、向けられたナイフも怖い
「し・・・のぶ」
ボコボコにされるかもしれない
だけどそんなの別にかまわない
殴られてもいい
僕がどうなってもいい
「ヒッグ・・・秋、ひとく、死ん、じゃ、ゔ」
このままだと
秋人君が本当に死んでしまいそうで
今はそれが何よりも怖い
「・・・・はっ」
「!?」
氷崎という男は、鼻で笑うと
僕から手を離した
「お前ら、やめろ」
そして、秋人君を囲っていた
周りの不良に向かってそう指示をした
不良が離れると
秋人君は床にドサっと倒れ込んだ
「秋人君!!」
「・・・・しの、ぶ」
頭から血が出てる
声も弱々しい
「だ、いじょうぶ・・・だ」
「っ!・・・ゔっ・・・グズ」
体中傷だらけで血まみれなのに
僕を見つめて、また笑う
そして、ボロボロの体を起こして
秋人君は立ち上がった
「っふぇ・・・うっぐ・・・」
大丈夫なワケないじゃないか
「泣く、な・・すぐ助ける、から」
僕なんかもう助けなくていいよっ
助けなくていいから・・・
お願いだから
「っ、あ、きひとくん・・・」
もう僕の為に無茶はしないで
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