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その通り
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ベッドの上で眠る秋人君を見ると
やっと心から安心する事が出来た
頭に首・・・もう体中包帯だらけで
両腕には数本の点滴が繋がれている
手術は無事成功したけど
体内の血液の25%が失われていた秋人君は
病院に搬送されるのがもう少し遅れていたら
助からなかったと言われた。
その言葉を聞いた時
また怖くなって体が震えた
「・・・秋人君」
でも秋人君は生きてる
「ほんとに・・・良かった・・・」
そっと秋人君の手に触れると
秋人君の体温が感じられた
暖かい手の温もりが
昨日から張り詰めていた緊張感を解いてくれる
いつ目を覚ますか分からない。
でも、僕は秋人君が目を覚ますまで
こうやって手を握っていたい
秋人君が目を覚ました時
僕を見て安心してくれるように
ちゃんと笑ってあげるんだ
「だから・・早く起きて・・・」
早く秋人君の声が聞きたい
握る手に思いを込めて
僕は秋人君の名前を何度も呼んだ
「大崎」
その時、病室の扉が開き誰かが僕の名前を呼んだ
振り向くと、額に汗を流す上城先輩が立っていた
「せ、先輩っ」
急に先輩が来たから
僕はビックリして先輩の方へと体を向けた
「話は聞いた」
「え・・・」
「・・・・無事で良かった」
先輩はそう言うと安心したかのように
壁に背を付けはぁー、と息を漏らした
先輩は話を聞きつけてここに来てくれたんだ・・・
「・・・ぁ」
だけど、先輩の顔を見て最初に浮かんだのは渋谷君の事・・・
「新が助けに来たんだって?」
「あっ、は、はい」
「そうか・・あいつが・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・」
昨日の事を一体どこまで聞いたんだろう
あの氷崎という男は
先輩の事を知ってるかのような口振りだった
その男の本当の目的は渋谷君だったって
先輩は知ってる・・・のかな?
でも知ってたらここには来ずに
真っ先に渋谷君の所に行くはずだ
「あの・・・先輩・・」
「ん?」
そう考えながら、ベッドの横の机に置いてあった
あの小さな箱を手に取った
「先輩、これ・・・」
「?」
「あ・・・っ」
だけど僕は渡す手を止め
箱を背中に隠してしまった
「なんだ?」
「す、すみませんっ、なんでもないです!」
「?」
咄嗟に何かを隠す様な動作をした僕を
先輩は不思議そうな顔で見つめて来た
この小さな箱は、多分渋谷君が
先輩への誕生日プレゼントとして用意してた物だ
渋谷君は覚えて無いのか、忘れてるのか
俺のじゃねえって言われたけど・・・
これはきっと先輩へのプレゼントだ
だから、これは今僕が渡してはいけない
渋谷君の手で先輩に渡してあげなくちゃいけない物なんだ
「大崎?」
「・・・・・」
ってあれ・・・前なら渋谷君の為に・・・とか
微塵も考えた事無かったのにな・・・
先輩とこうやって話してる時も
ドキドキして緊張してたのに
「先輩・・・」
声も震えてない
ちゃんと真っ直ぐ先輩を見れる
「お、お誕生日・・・おめでとうございます」
きっと、この言葉も一番最初に
渋谷君に言ってほしかったかもしれないけど
堂々と目を見て言える今
最後の気持ちを込めて・・・
今までの先輩への思いを込めて僕はそう言った
「・・・・っ」
だけどやっぱり目が合うとすぐに下を向いてしまった
「大崎・・・」
「!?」
その時、先輩が僕の頭の上に手を置き
少しビクっとしてしまった
「ありがとう」
「・・・・っ、はぃ」
そう微笑んで先輩は頭を撫でてくれた
「髪、こっちの方が似合ってる」
「え?」
「綺麗な目してんじゃん」
「・・・・・」
綺麗な・・・目・・・
「・・・あ」
前に秋人君にも同じ事を言われた
「ありがとう・・・ございます」
大好きな先輩に
触れられて、嬉しい言葉を言われたのに
「あり、がとう・・・ござ・・います」
頭の中は秋人君でいっぱいだった
「・・・っ・・・ぅ」
「・・・・」
ボロボロと涙を流す僕を
先輩は何も言わずただずっと頭を撫でてくれた
「・・・・っ、ヒック・・・」
悔しいな・・・
秋人君の言った通りになったじゃないか
「ぅ・・・っ・・・」
『忍は俺の事絶対好きになるよ』って
悔しいけどその通りだったよ
「大崎、ありがとな」
「っ・・・はい・・・」
大好きな先輩が目の前に居るのに
今は君の事しか考えられないよ
「・・・グズ・・・っ・・・」
「・・・・」
やっと気持ちが落ち着き
涙も止まろうとしていた時
病室の扉が開いて僕と先輩は入り口の方を見た
入って来た人物を見ると
先輩はすぐに僕から手を離した
「・・・新」
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