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「ああもう!約束の時間過ぎちまったじゃねえかよ!」
学校に着くなり、先生に捕まっちまって二階の視聴覚室から長机を体育館まで運ばされた。
腕めちゃくちゃ疲れたし、冬だってのに久しぶりに汗掻いた。
「廊下は走るな。別に15分くらい遅れても平気だって」
「平気な訳ないだろ‼︎5分前行動が常識なんだぞ‼︎会長待ってんだぞ‼︎」
眼鏡のやつ、しれっとした顔しやがって
「急げって‼︎」
「はいはい」
体ん中がそわそわするし、15分もオーバーして待たせちまってる会長の事を思うと申し訳なくなって来る。
勝手に早足になるし、行くの怖かったのに時間守れなかったから早く行かねえとって焦り始めてる。
「チッ、これだから時間守れねえのはヤなんだ‼︎」
気持ちも整理付けれてないのに、時間ばっか気にしちまってそれどころじゃない。
「眼鏡‼︎早く来いって‼︎」
「別に樹は怒ってねえって」
「そういう問題じゃねえ‼︎」
この俺が時間守らねえなんて情けねえ‼︎
先生この野郎空気読めよ‼︎
俺は今日大事な話をしなくちゃならねえのに体力削ぎ取らないでくれよ‼︎
「ど、どうしようっ、やべえ緊張してきた」
スタスタと足は勝手に進んでく。
でも全然気持ちが落ち着かない
「……え、えっと…」
会長にまずは遅れてすみませんって謝って……
それから……それから…
「新」
「⁉︎」
急に背中から抱き締められて足が止まった。
床ばっか見ながら歩いてたから視線を上に上げると、目の前は生徒会室だった。
「通り過ぎようとしてたぞ」
「わ、わ、わか、ってる」
生徒会室の扉ってこんなに威圧感あったか?
なんかすげえデカく感じる
「俺は廊下で待ってるから。一人で行ける?」
「へ…?」
一人で……?
「樹と二人で話し出来る?」
「……っ…」
駄目だ…心臓が壊れそうなくらいバクバクしてる。
息苦しくて喉が痛え
「ま、て……ま、待って…」
「………」
急に足が震えて来て、眼鏡の腕にしがみ付いた。
「新」
「も、もうちょい……待って…」
会長に会ったら…まずは遅れてすみませんって言うんだ
「俺はちゃんと居るから。何かあったらすぐ呼んで」
「っ……」
扉を挟んでこいつは居てくれる。
別にこいつが居なくても平気だけど。いや平気だ‼︎
会長と二人きりで話しなんて今まで何度もあったじゃねえか
「新?」
「……う、うるさい……大丈夫だ」
会長は、俺を見てどんな顔をするんだろう
「離せ……行ってくる、から……」
「…ん」
俺は、会長を見てどんな顔をするんだろう
「失礼します……」
ノックをして扉に手を掛ける。
久しぶりの生徒会室の空気の匂いが感じられる。
下を向いたまま中へと入ると、太陽の日差しが生徒会室の床を照らしてた。
反射した光が目に入って、眩しくて目を閉じてたら、窓の方から懐かしくて暖かい声が聞こえた
「おはよう」
ゆっくりと目を開いて声のする方へと視線をやった
「来てくれて良かった。来る途中で何かあったんじゃないかって心配してたんだ。」
「……ぁ…」
朝日に負けないくらい、眩しくてあったかい笑顔
恐怖、不安、緊張全てを溶かす優しい声
その声と笑顔が凄く懐かしく思えて
声を聞くだけで、涙が出そうになった
「来てくれてありがとう」
俺を見つめて微笑む
俺の大好きな人
「……会長…」
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