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勘
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面倒くさいオリエンテーションが終わり、部活紹介が終わり、午後は2、3年は平常授業。
司会進行役という一番怠い仕事をやっとやり終え、午後は適当に授業を受けた。
新入生はうざいほど元気だった。
オリエンテーションが終わると壇上の方へと群がって来て質問攻め。
軽く流したけど、今日一番気に食わなかったのはあの新にも新入生女子が群がってた事だ。
あいつ、テンパってたくせに顔真っ赤にしやがって。
仕舞いには後で俺のところに来てその話を自慢気にされた。
連絡先交換して下さい。って言われたんだぜ?なんて平然と俺に向かって言いやがった。
後でどうなるか、あいつ分かって言ったのか?
俺に構って欲しくてそんな事言ったんなら、そらもう可愛いじゃねえか。
まぁ、放課後はあいつ俺の家に来るし、その時ゆっくり初、女子に囲まれた惚気話とやらを聞いてやろう。
「おーつ」
この時の俺は別に機嫌は悪くなかった。
やっとあいつと帰れると思ってむしろ上機嫌だった。
学校を出る前に一度生徒会室に寄ろうと思って、珍しく挨拶をして扉を開いた。
「失礼しますでしょ。もう三年生なんだから入室の挨拶くらいちゃんとしてよ。」
扉を開けると、樹がため息を吐きながらそう言ってきた。
手には真新しいノート、ペットボトルのお茶が二本。
少し古びた資料などが机の上に置かれている。
「なに?今日何かあった?」
「……無いよ。ちょっと私情。」
「私情?」
「日野に勉強を教えてあげるんだ。」
日野?………ああ。あの馬鹿か。
せっせと勉強の準備をする樹を暫く観察してると、なに?という顔でこっちを見てきた。
樹は機嫌が悪そうに見えた。
珍しく眉間にシワが寄ってるし、何より少し殺気立ってねえか?
「疲れてんなら今日は断われよ。」
そんな樹を見て、あの馬鹿が樹に無理矢理勉強教えてくれって頼み込んだんだろうな。と思った。
「別に疲れて無いよ。僕がみてあげるって言ったんだから。」
「お前が?」
「彼、完全に僕を馬鹿にしてるよ。勉強したいと思っているくせに、僕には全く頼みに来ないんだ。舞園がダメならお前に頼むって言っていたから、僕がみてあげるって言ったんだ。」
「……へぇ…」
また樹の眉間にシワが寄った。
さっきの話を聞いてだいたいの内容は分かった。
あの馬鹿が勉強したい。か……
けど今の樹は何か今までとは違うよな。
勉強なら、また前みたいに生徒会全員のローテーションで教えてやればいい。
それならお前に負担が掛かる事もない。
なのに何で今回は俺たちに相談せず、私情って言ったんだろうか。
なんて思いながら、その後も樹の顔を伺っていたら、なんだそういう事か。と検討が付いた。
「ああね。」
「?」
どうやら、呟いた言葉は聞こえて無かったようだ。
少し口元を緩めていると、険しい顔で樹が口を開いた。
「お前、日野に頼まれても絶対面倒くさがって断るでしょ?」
「いや、別に見てやってもいいけど」
「えっ」
「ぶふっ……」
即答で返してやったら、すげえびっくりした顔で「えっ」なんて言われたから、つい笑ってしまう。
樹の手からペットボトルが滑り落ちて床に転がってる。
こいつの反応を見て更に確信した。
「ま、今更だからもうヤだけどね。せいぜいあの馬鹿を天才にしてやれよ。」
「え、か……帰るの?」
「新を待たせてっから、じゃあな」
まだ驚いた顔をしてる樹に向かい手を振る。
あいつ、俺が絶対めんどくさがると思ってただろうから、即答で別にいいと言うとは思ってなかったんだろう。
すげえ取り乱しそうな顔してたな。ウケる。
「あ、そうだ。おい樹」
「な、なに?」
「お前、結構素直になったじゃん」
「素直?」
新の名前を出しても表情一つ変えなかった。
まだ俺が何の事を言ってるのか分かってねえだろうけど、まさか樹があの馬鹿をねぇ……
「頑張れよ。おべんきょ。」
まぁ、俺の勘だけど。
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