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本気じゃない
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「え……」
俺は、何か変な事でも言ってしまったがやろうか。
何故か物凄く冷たい視線で見られる。心なしかいっちゃんちょっとずつ後ろ下がってない?
「ま、マゾって…」
「“そういう”相手欲しいなら他当たってよね。」
ちょっと待ってや!なんでそんな話しになっちゅうが⁉︎
痛い。いっちゃんの俺を見るその冷めたい視線が俺をグサグサ刺しとる‼︎
いやいやでも…そんないっちゃんもまたイイかも…
「っじゃなくて‼︎俺はマゾやないぞ‼︎」
「そうか。なら安心だよ。」
って言うたくせに、いっちゃんは相変わらず俺と距離を取り始めた。全然安心してないやか。俺を変態の目でしか見とらん。
マゾってあれやぞ?蹴られたり殴られたりしてアンアン喜ぶ奴の事ぞ?傷付けられる事に快感を覚える奴の事ぞ?冗談やない。俺はマゾやない。
けんど、別にサドでもない。
俺は普通や。よくよく考えてみればいっちゃんの方が……
「なに?」
「…………」
じぃっといっちゃんの顔を見る。冷たい視線は変わってなくて、綺麗なその目で睨まれた。
「サドやな。」
「はい?」
そうやで。いっちゃんは隠れサドやん。
思い出せ俺。俺を抱いた時のいっちゃんは恐ろしくサドやったわ。性格がな。
別に殴られたり蹴られたいはされてないけど、あの時のいっちゃんは凄かったなぁ〜。二つ以上の意味で。
「いっちゃんに見つめられたらゾクゾクするわ。」
「ゔっ」
場を和ませようとにっこり笑ってみたけど、いっちゃんは口抑えて吐きそうな仕草しとる。
俺また変な事言うてしもうたかな?
「自覚無いんだね。この変態。」
「やから俺はマゾちゃうって。普通や。」
さらりと変態って言われた。
んーー。マゾはなんかカッコ悪いき嫌や。
色んな意味で相手の好きにされるのはなぁ……
「いっちゃん。ちょっとこっち来て?」
「嫌。」
「んじゃ俺がそっち行く〜。」
そう。……例えばこんな時とか
「ちょ、なにっ?」
近付くと、急にいっちゃんは慌て始めた。
壁まで追い詰めて、追い詰めて、綺麗な顔にそっと触れる。
そして、締まった綺麗な顔のラインをゆっくり指先で撫でる。
必死に俺を引き剥がそうと胸押されとるけど、いっちゃん細いし、俺より力無い。
背けられる顔を無理矢理こっち向かして、ぐぐっと顔を寄せるといっちゃんは口を強く閉じた。
「……っ…」
「…………」
睨まれて、またぐぐーって胸押された時、背筋がぞわぞわとした。
もう少しだけ顔を近づけてみる。唇が当たりそうなくらいに。
「……ひ、の…」
「………」
「退いて……」
「……………」
いっちゃん怒っちゅうけど、顔赤い。
それにこんな簡単に俺に捕まる人やったっけ?
前は本気で俺の事嫌っ‼︎って感じやったのに、ここにおるのは黒々しいいっちゃんやない。
「……いっちゃん」
そんないっちゃんを見るとまたゾクゾクする。
今のいっちゃんは見た事ない顔しとる。
親指で形の整った綺麗ないっちゃんの下唇をふにふにと触ると、いっちゃんはまた顔が赤くなった。
退いて。退いて。って睨み付けられながら言われるけど、退きたくなかった。
その顔をもっとめちゃくちゃに壊してみたいって思った。
「日野…っ、点呼があるから…」
「…………」
嫌がっとるけど、やめたくない。
「嫌々言ゆう割りには、顔真っ赤やん。」
「は…?」
ゾクゾクするなぁ。可愛いなぁ。
ついペロリと自分の唇を舐めてしまう。
耳元で息をふぅーっと吹き掛けると、プルプルといっちゃんの体が震えた。
その反応が可愛くて。なんか意外で。
俺はいっちゃんの笑顔が好きやけど、泣かせたらどうなるんだろうと思ってつい楽しくなる。
「いっちゃんの方が、マゾやったりしてな?」
楽しい。それだけで留めておけば
こうして触れる事は出来る。
いつもの俺で接する事が出来る。
「あの時の約束覚えちゅう?」
「……や、約束?」
お互い別に本気な気持ちになる事はないやろうし。なら、お互いそれ割り切って接すればいいやん。
「俺としようや。今度は俺が上で。」
いっちゃんは俺を好きな人の代わりにしたらえいし、俺は遊びでそうする。お互い本気じゃない関係。
これが一番楽な付き合いやん。
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