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犬より猫派
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放課後は成海も日野の勉強会に加わり、各科目を分担して彼に教えた。ただ、成海はどこか日野に対して殺気を放っていた様にも思えた。新にちょっかいを出していたから、無理はないと思うけど、日野への勉強の教え方がスパルタ過ぎて僕は少し日野が可哀想だと思った。
でも、さすが成海だ。
スパルタで口の利き方は乱暴だったけど、教え方は誰よりも上手だった。日野も問題の正解率が高くなり、少しずつではあるが、学力は確実に向上していた。
ただ一つ、関心出来ないことがあった。
新の首筋には濃いキスマークが付けられていた。
その場ですぐに新と成海に注意すると、新は顔を真っ赤にして首筋をゴシゴシと擦った。
それを成海が茶化して、更に日野が煽る。
新は眉を吊り上げて二人を怒鳴り散らしていた。
僕はその光景を見て、自然と笑ってしまっていた。
本当に賑やかだ。なんて思い、結局僕も新に怒られた。
以前の僕なら、きっと新の首筋に付けられたキスマークを見ただけで、成海に嫉妬して、冷静ではいられなくなっていたはずだ。でもこの時は『あ。また成海と…。』ってどこか陽気に考えて心の中では目の前の二人を見て微笑ましいな。なんて思っていた。
自分の中ではちゃんと分かっている。
きっと、新への気持ちは本当に終わってしまったんだ。と
「成海。相変わらず独占欲が強いのはいいけど、他から見えない場所にせめてしてね。」
一通り勉強会が終わり、さぁ帰るか。と立ち上がった成海に向けてそう言うと、成海より先に返事をしたのは新だった。「会長っ‼︎もっと言ってやって下さい‼︎」ってプンプン怒りながら成海の肩を叩いていた。
「はっ。なら次はお前の恥ずかしい場所にいっぱい付けてやるよ。」
「なっ‼︎」
「それセクハラだよ。」
新はボンッ、と顔を真っ赤にさせて「変態が‼︎」と成海に向かい怒鳴り生徒会室を出て行ってしまった。
そんな新を見て、また僕は微笑んでしまう。
可愛いな。そう思いつつ、成海に早く新を追いかけてあげて。と伝えた。
「明日は?」
「放課後。またお願いしてもいい?」
「了解。」
僕と成海のやり取りは普段は言葉数が少ないが、それだけでも十分何が言いたいかとかは分かる。
日野の勉強は放課後のみ参加でとお願いすると、成海は了解。と言って生徒会室を出て行った。
賑やかだった部屋が静かになり、机に散らばる問題用紙や解答用紙を一つに重ねる。消しゴムのカスも綺麗に集め、ゴミ箱へと捨てた。
「ほら。僕達も帰るよ。」
「……お、おう。」
ソファーの上で伸びてる日野に声を掛けると、気の抜けた返事が返ってくる。
成海にこっぴどく扱かれたらしく、日野の元気は更に半減していた。
「寝てないで起きて。」
「俺、今日はめっちゃ頑張った……もう動けん。」
日野はそう言うとソファーに顔を埋め僕に背を向ける。
確かに今日は朝からモチベーションが低かった中、成海のスパルタ指導を受けたんだ。よく耐えた方だよ。
今の日野はシュンと尻尾を丸め耳を下げた大きな犬の様に見える。
その大きな犬の背中に近付いて、そっと頭を撫でてみる。
「お疲れ様。」
「……………」
日野は少しピクリとし、耳こそ下がってはいたが、尻尾は嬉しそうに揺れている様に見えた。
日野の髪は、僕や、新の様に細くは無くて、毛質は本物の犬のようにゴワゴワとしていた。でも決して傷んでる訳ではない。ゴワゴワだけど、ふわふわ……なんだかクセになりそうな触り心地だった。
「日野…」
中々振り向かず、尻尾を振り続ける日野に声を掛ける。
大きな背中を見つめると、そう言えば、なんで今朝はあんなに元気が無かったのか。どうして泣いたりしてたのか。
どうして、『離れたくない。』なんて言ったんだろうか。なんて事を考えてしまった。
「帰るよ。」
聞けば、日野は答えてくれるのだろうか。
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