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ごめんな。
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「…………」
「……………」
「……………」
「……いっちゃん……寝た?」
「…………」
俺に抱きついたまま、ポテっと俺の胸に倒れ込んで来た。
前髪を撫でて目を閉じたいっちゃんの顔をよく見ると、気持ち良さそうな顔をしとった。
頬を撫でて、一旦抱き抱えベッドに横にさせる。
その間もずっと俺の服を掴んだままで、掴むその手はめっちゃ強くて、この時はいっちゃんがちっさい子供に見えて少し笑ってしまった。
「…………」
寝顔を見ながら、さっきいっちゃんに言われた事を考えてみる。
俺の事を好きやなんて、正直まだ信じられん。
…だって、あれ程俺の事を嫌いって言よった人やで?
やのに……俺を好きとか……そんな……
「……ほんま?……ね…いっちゃん…」
「…………」
気持ち良さそうに寝よるいっちゃんにそう聞いてみる。
寝返りを打って俺の方に顔を向けたその顔は、めっちゃ穏やかで、優しくて、柔らかい笑顔。
「………いっちゃん」
服を掴んどるいっちゃんの手を上から握りしめてみる。
ぎゅ、と。
ほんならいっちゃんも僅かやけど握りしめてくれた。
「はは……俺なんか好きになったらいかんやろ…」
この時、熱い手を包む俺の手は多分冷たかったはずや。
やのに、その手の冷たささえも愛しいと言ってくれよるような寝顔を向けられて、俺の名前を寝言で呟く度に、胸がぎゅうぎゅうと締め付けられる。
「…いかんて……」
約束……したやんか。
「俺はこれ以上好きにならんって……」
そう…約束したやん………
「う…」
「…………」
酒のせいで熱いのか、汗をかきはじめたいっちゃんは、少しだけ眉を歪めた。
制服のシャツの襟元に手を伸ばして、一つ、また一つとゆっくりボタンを外してあげた。
「……………」
おかしいな……前、いっちゃんの服を脱がした時は、こんなに手ぇ震えよったかな?
「……ひの」
「……………」
名前を呼ばれるだけで、すぐにいっちゃんから手を離してしまった。
ほっぺは真っ赤になって、荒い息を吐いて、熱くて苦しいろうに、嬉しそうに笑いよる。
「………やめてや…」
見ゆうこっちまで笑えてくる。
本当に俺の事を好きって言いよるみたいで。
「やめてや……いっちゃん…」
誰も見てないのに、手の平で顔を覆って下を向いてしまう。
顔が熱くて、胸が苦しくて、何度も頭の中でいっちゃんの言葉が巡って。
絶対そうはならんって自分の中でも決めちょったのに、いっちゃんに言われた言葉が嬉し過ぎて、きっと俺のこの気持ちもいっちゃんが俺に対して思うてくれちゅう気持ちと一緒やと思うとまたそれが嬉しくて…嬉しくて……
「…大事にしたくなるやんか……」
胸がくすぐったい。今すぐ抱き締めたい。
もう取り消しは効かんで?って言って、俺だけのものにしてしまいたい。
……そんな思いが溢れて止まらん。
「俺を好きになるって意味、分かっちゅう?」
「…………」
……あのないっちゃん。
俺、いっぱいいっちゃんに聞きたい事あるで。
知ってほしい事だっていっぱいあるで。
「……けんどなぁ…」
……俺はいっちゃんに嫌われるのが一番怖いがよ。
俺はいっちゃんを手に入れる為にはケジメを付けないかん…
今度は俺から、いっちゃんに面と向かって好きって言う為には、やらないかん事がある…
でもそれをしたらきっと嫌われる。
「……好きになってくれて…ありがとう…」
いっちゃんの頬に触れながら、耳元でそう呟いた。
そして「俺も好きやで。」と、その言葉を添えると、今までの俺の中にあった「寂しい。会いたい。特別。」その言葉が全部、好きというたった2文字の言葉の中に収まった。
加えて新しく生まれた言葉は、『愛しい』
「もう…可愛すぎるやろ……」
いっちゃんの長い睫毛を指先で撫でる。
胸元がちらりと見えてどうしようもなく襲いたい気持ちにかられるが、シーツを引っ張っていっちゃんに被せ我慢した。
「……ごめんな。」
そしてポツリとその言葉を落とし、携帯を開いて桐島へ繋がる番号を押した。
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