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行動と覚悟
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足をその地に降ろすと、透き通った濁りのない空気が体を突き抜けた。
360度ぐるりと辺りを見渡せば、遠くに山が聳え立つ。
騒音など一切なく、鳥の囀りや木々がざわめく音のみが聞こえてくる。
手荷物は最小限に抑え、5日程留守にすると父さん宛に書き置きを残して家を出てきた。
「……ここが」
小さな紙に目を落とし、そこに記されていた住所に今辿り着いた。
なるべくこの場所は人に聞かないでほしいと書かれていた為、タクシーで近くまで来た後は徒歩でここまで来たが、山の中で辺り一面緑で覆われているこの場所を自力で見つけるには少し困難だった。
大きな門の脇には『日野』と書き記された表札が掲げられている。
紙を折りポケットに仕舞うと、一度大きく息を吸い込んだ。
………昨日、目を覚ますと、日野からの書き置きが置かれていた。
内容を見ると、僕はここに来るしか無いと思った。
だが、日野の実家の住所を僕は知らない。
そんな時、桐島さんから頂いた紙を見ると、僕の考えを読んでいたのか、桐島さんがくれた紙には日野の実家の住所が書き記されていた。
益々、僕はここに来るしか無いと思った。
あの馬鹿を僕のものにするには、僕があの馬鹿のものになるしかないと思った。
全て手に入れるつもりで、全て捨てる覚悟で僕はここに足を運んだ。
大きなこの門の向こう側は、僕が今まで生きてきた世界とはまるで違う別世界が広がっているに違いない。
前に立つだけで圧倒されてしまうが、覚悟はもう出来ている。
携帯を取り出し、紙に記載されていた番号を入力する。
発信ボタンを押すと、コール音が鳴り響き、2コール目で相手が電話に出てくれた。
「こんにちは。月島です。……はい。今到着しました。」
お互い落ち着いた口調でやり取りが行われる。
すぐに迎えを向かわせると言われ、電話を切ると、緊張が一気に体を駆け巡る。
「……はぁ」
もう一度、大きく息を吸い込む。
「大丈夫…」
震えてない訳じゃない。
怖くない訳じゃない。
でもあの馬鹿がここに居るって考えればこんな恐怖どうってことない。
何度も頭の中でシミュレーションを繰り返していると、門の向こう側から数人の声が聞こえて来た。
「…………」
そしてゆっくりと、門が開く。
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