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昨夜振り
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昨日の夜から新の機嫌が悪いとは思っていた。
けど俺的には何に対して新が機嫌を悪くしているのかさっぱり分からなかった。
理由さえ言ってくれれば、謝ってやったのに。新は何も言わないまま朝起きると先に帰ってしまっていた。
財布も俺の家に置きっぱなしで、連絡しても返事無いし。
学校に着いたら会いに行こうと思ってたけど、学校に着くなり樹に呼び出されるわ、休み時間はやたら先生に呼び出されるわで、結局時間が空いたのは5限目の休み時間。
「はぁ…」
10分しかない短い休み時間の中で、何に対して怒ってるのか、なんで先に帰ったのかを聞こうと思って新の教室に来たけど、教室に居たのは新だけで、しかもめちゃくちゃ具合悪そうだし…
「顔真っ青…」
やたらと額から汗を流しながら苦しそうに唸る新は、机に突っ伏したまま何度か俺の事を呼んでた。
教室に誰も居ないってことは、移動教室だったのか。
こいつがこんなに具合悪そうなのに誰も声掛けてやらなかったのか?と新のクラスメイトを疑う。
「めがね…」
「…ここに居るよ。」
「ゔゔ〜っ…」
とりあえず、保健室に運んで寝かせ付けてる。
起きてはいないようだが、寝言の様に俺を呼ぶ新の額に冷えピタを一枚貼ってやった。
冷えピタは保健室の冷蔵庫にあるやつを勝手に拝借したけど別にいいよな?
「ぎもぢ悪い……」
「吐く?吐くなら言って。」
「ゔ〜〜……」
熱を測ってみたけど、そんな高くないし、夏バテか?とも思ったけど俺は医者じゃないからなんとも言えない。
「……めがね……?」
「ん?」
なんでこういう時に保健医の先生が留守にしてるんだと少しイラついた時、新が薄っすらと目を開けた。
「……おま……なんで…」
「…心配で会いに来たの。そしたらお前すげえ顔して机に突っ伏してたから。ここまで運んでやった。」
「………心配って……」
「色々聞きたい事あるけど今は寝てろ。熱は無いから安心して。」
「…………」
前髪を撫でてやると、新はきゅ、と目を閉じた。
「じゃ、俺教室戻るから。放課後迎えに来るまで大人しく寝てろよ。」
「はっ⁉︎ちょ、おい待てよっ‼︎」
「おっと…」
俺がここに居てもしてやれる事は無いと判断し、教室に戻ろうとベッドから腰を上げると新は飛び起きて俺の腕を掴んできた。
「なに?」
「……っ…なよ……」
「………」
ペラリと新の額から剥がれ落ちそうになる冷えピタと、顔を真っ赤にして少し息が上がってる今のこいつに対し、この時少しムラっとしたのは秘密だ。
「なに?聞こえない。」
うそ。聞こえてたけど。
「………置いて行くなよ…」
「………」
ぼそりと新がもう一度呟いたところで俺は笑みが零れた。
「100点」
「…?」
俺が具合の悪いこいつを一人残して、面白くもない授業に今更戻る訳がない。
「お、おい、眼鏡てめえ…」
俺にしてやられた。と怒りそうになる新を押し倒してそのままベッドに横になった。
「ほら。行かないから寝てろ。」
「……っ…重い…」
「愛の重みだ。」
「はあ?てめえ頭おかしくなったか?」
そう言いながらも、ボボボっ、と顔を真っ赤にしながら俺を引き剥がそうとしてくる。
「素直じゃねえな。嬉しいくせに。」
「誰がだ‼︎嬉しくねえキモいわ‼︎何が愛だ‼︎」
「照れんなって。」
「っ‼︎……馬鹿にしやがって…っ…」
「はいはい。可愛い可愛い。」
暴れ出しそうになる新を抱き締めると、新の顔が陰る。
「新?」
「………ヤなんだよ…」
ヤ?
「お前が……そうやって俺の事…可愛いとか…」
「…うん?」
ふるふると震え始めた新の顔を覗き込むと、少し涙目になった瞳で睨みを効かされた。
「なんで?可愛いと思うから可愛いって言ってるだけだろ。」
「だから…それがヤなんだ…」
「………」
あぁ……どうしよう。
「俺…お前みたいに男らしい身体つきじゃない……」
「うん。」
「うんって言うな…」
「……うん。」
「〜〜ってめ…」
こいつ、今具合悪いんだよな?
具合悪いって、分かってるんだけど……
「で?…それから?」
「…………俺だって…男だ…」
なんか、めっちゃ襲いたい。
「知ってるよそんな事。」
襲いたいという気持ちをなんとか抑え込み、それを誤魔化すようにしてもう一度新を強く抱き締めた。
「お前みたいに胸板厚くねえし…」
「うん。」
「腹筋だってそんな割れてねえし…」
「知ってる。」
「俺、お前に勝てるモン何も無いから…」
「そんな事ないよ。」
俺の胸に顔をスリスリと擦り付けながら、拗ねた声でそう続けた。
「お前みたいに…かっこよくねえし…」
「…………」
そして極め付けに呟いたその言葉は、見事俺の理性をぶち抜いた。
そうだな。効果音を付けるなら『ズギャーン』だな。
「なに?そんな事で拗ねて怒ってたのか?」
どうしたものか。なんなのこの可愛い生き物。
「当たり前だろ…お前の昨日の発言で俺がどれだけ傷付いた事かっ…」
昨日?……あぁ…もしかして昨日の夜俺が新に言った『もっと太れ』とかの事か?
「朝から走って…頑張ったんだ…」
「この暑い中走ったのか?」
「走った。」
「…………」
なるほどね。色々と理解出来たわ。
「ごめん。そこまでお前が気にするとは思わなかったんだ。」
「………」
からかう程度で言った事だったけど、本人にとってその言葉がどう聞こえるかなんてちゃんとそこまで考えてやれてなかった。
「何もしなくていいから、無理して体壊すのだけはやめてくれ。」
「………ふん…」
ゆっくりと頭を撫でてやると新は俺の背中に手を回して抱き締め返してくる。
いつも朝起きると俺のベッドでこうして抱き合っている時の事をここで再現する。
正確に言えば、今朝出来なかった事を今ここでしてる。
「…でも、明後日の体育祭…俺はお前に勝つからな…」
「団体競技なのに?」
「…うっさい……そんなの関係ない…」
「ふっ…はいはい。」
二人してベッドに横になって、向き合って、抱き締め合って、いつもより小さな声で会話をして、それ以上は何もしない。
「お前…ムカつく…」
「知ってるよ。」
「………っ…」
新は頻繁に俺に対して怒る。毎日って言っていい程だ。憎まれ口だって治るどころか日々酷くなってる。
「……ムカつく…けど……」
だけど、嫌いになったり、憎めないのは
「………好き…」
やっぱりどうしようもないくらいに、お前が可愛いからなんだよ。
「俺も好きだよ。」
ま。可愛いって言ったらまた怒るだろうから
今は言わないけど。
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