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二人の間には
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グラウンドに響き渡った大きな声は、小さくこだまを繰り返しながら消えて行った。
そしてその瞬間、その大きな声を発した者に全校生徒の視線が一気に集まったのは当然の事。
『……日野…』
会長が小さくそこに居る奴の名前を呟く。
「………」
……あそこに居るのって巨人だよな?
そんで会長もさっき巨人の名前呟いたから巨人だよな?
「いっちゃん‼︎」
『⁉︎』
巨人は周りの目を諸共せず、会長の名前を呼ぶと、何やら今度は声には出さず口を大きく五回パクパクとさせた。
『…………っ…』
と、同時に会長の顔が真っ赤になった。
「?????」
もちろん、俺とその他周りの奴等の頭の上にはハテナが沢山浮かぶ。
『……私からの挨拶は以上です。』
結局、会長は赤面したまま全校生徒に頭を下げ挨拶の言葉を終了させた。
『……と……最後に…』
いや、終了させたと思いきやだ。
『3年C組、日野龍也さん。……』
会長は頭を下げ礼をし、一旦下を向いたが
『この場で突然大声を発し、皆に迷惑を掛けた挙句、開会式の進行を妨害した事について、私から少しお話があります。』
頭を上げた会長は、さっきまでの柔らかい声と笑顔ではなく……赤面した顔でもなく
『後で私の所まで来るように。』
この少し低い声は、今までに聞いた事もない程に怒っていて、顔は笑っていたが、目は笑ってなかった。
「……ぉ、おん……」
その会長を見た全校生徒全員の背筋が凍ったのは明らかだが、その倍、恐らく巨人はもっと恐怖したはずだ。
「…会長……怖え…」
巨人が会長に向けて何を口パクで言ったのかは分からねえ。でも、あの会長があそこまで怒ってしまう事を口パクしたに違いない。
「………」
だけど、ちらりと表彰台から降りようとする会長を良く眺めて見ると、会長の耳は真っ赤になってた。
「??」
どうかしたのかな?って思ったけど、今は開会式の途中だったから聞きには行けなかった。
まだ少しざわつく中で、さっき会長に怒られたばかりなのに、巨人だけはニコニコと笑っていた。
「渋谷‼︎応援席行くぞ‼︎」
「お、おう…」
開会式が終わったら会長の所に行こうと思ったけど、ダチに背中を押されて応援席まで連れて行かれた。
「まずは一年の100m走からだな‼︎」
「そうだな。」
応援席に座り、ダチと肩を組んで今日1日頑張ろうぜ。と拳を合わせる。
俺は学校行事のイベントといえば体育祭が一番好きだ。だから当然テンションも上がるし、出る種目は全部勝ちたい。
……変な種目にも出る事になったけど、それでも全力でやるつもりだ。
眼鏡にだって、今日何か勝てるものが見つかるかもしれねえ。
だから、勝負だけに集中したい。
……けど………
「渋谷?」
「……………」
ふと、校舎の方へ会長と巨人が並んで歩いて行ってるのを見つけると、その光景をまじまじと見つめてしまう。
「……会長…」
5日間、会長が学校を休んだ時があった。
そして学校に帰って来た日から、会長があの巨人と二人で居るところを良く見るようになった。
「…………」
決して二人を取り囲む雰囲気は前みたいにギスギスしてないし、むしろ柔らかくなってて、会長があいつに笑顔を向ける事も多くなった。
まさか、付き合ってる?
とかも思ったけど、何故かどうしてもその考えには辿り着きたくないと思った。
「……巨人も…長袖のジャージ着てる…」
今まで近い場所に居た会長が、凄く遠くに感じて、巨人と会長の間には俺が知ってはいけない何かがあるとその時の俺は感じ、少しだけ寂しいなんて思ってしまった。
「渋谷‼︎ほら応援‼︎」
「お、おうっ」
ボケーっとしていると、ダチに肩を叩かれ、我に返った俺は、目の前を全力疾走する同じ色の一年をとりあえず全力で応援した。
「走れ‼︎もっと全力で走れ一年‼︎」
「抜けるぞぉおおおお行けええええ‼︎」
「フライングすんなよ‼︎」
そしてなんだかんだで、体育祭は始まったのだ。
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