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話しの本題とは
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生徒会室に入ると、そこにはもう眼鏡と会長が居た。
入って来た俺達に一度視線を向けて、眼鏡は再び会長の方へと向き合った。
少し目を逸らされた気がしないでもないけど、あんまり深く考え過ぎないようにしよう。
「急に呼び出してごめんね」
「いえ…」
会長机まで歩みを進め、眼鏡の隣に並ぶと、会長はにこりと微笑みながら、何かの資料を俺と大崎に渡してきた。
資料の右上には、生徒の証明写真が貼られている。
「会長、これは」
大崎と目を見合わせ、本題についてを問う。
「新、君と大崎が生徒会に入ったのはいつだったかな?」
「……え、と……入学して半年が経った頃…くらいですかね」
首を傾げながらうる覚えの記憶を辿りそう答えると、会長はまた微笑んだ。
その顔を見て、俺と大崎はハっとする。
「うん。そろそろかなって」
そして会長のその言葉で全てを察した。
この資料、どれも1年の成績優秀者を抜粋したものだ。
「じゃあ、この中から次の生徒会メンバーが?」
あまりに急な事態に、大崎と俺は2人して唖然とする。びっくりしながら資料を眺める俺達を他所に、眼鏡はやっぱり平然としていた。
「今年から少し制度を変えようと思ってね、僕が1年生の中から上位4名を選んでおいたから、その子ら1人ずつに、僕達現生徒会メンバーが接触して、次の生徒会に相応しい人物かを見定めてほしい。それを伝える為に今日は集まってもらった」
「見定める?」
「そう。でも特別な事はしなくていいよ。普通に会話をして、どんな人物なのかを観察してきてほしいんだ」
そう言うと、会長はまた別の資料を俺達に渡してきた。
それはそれぞれ抜粋された1年に、誰がつくかというものだった。
本当に急な事過ぎて、まだ頭がついていかない。
資料を受け取り、俺が担当する1年の名前に目を通す。当たり前だけど、見た事もない顔だ。
話した事もない奴に接触しろって……
「期限は来週から3週間ほど。そんなに難しくはないでしょ?」
「会長っ」
こんな事急に言われたって…。
そう言おうとして、やめた。
「……それってつまり…」
資料を持つ手に力が入った。
この話しを持ち出してきたって事は、新しい生徒会メンバーがもうすぐで決まるという事。
つまり、会長と眼鏡が、生徒会から居なくなる……という事…
「新?」
「ぁ……」
辺りが一瞬だけ真っ暗になった。
顔を上げると、会長が心配そうな顔でこっちを見てる。
「大丈夫?」
「は、はぃ……」
たかが生徒会。時間が経てば、当然の如くメンバーは入れ替わっていく。
会長達が引退したら、今度は俺達。
だけど、もう少ししたら、ここにいるメンバーで生徒会と名乗る時間が終わる。
2人が、この場から居なくなる?……
「大崎も、来週からお願いしていいかな?」
「は、はいっ……頑張ります……」
隣に立つ眼鏡が、後数週間もすれば居なくなる。
別に、引退したからといって一生会えなくなる訳じゃねえけど………ほんの少し…ほんの少しだけ寂しい……なんて思ったり……
「今年も優秀な子ばかりだから、十分期待出来るよ」
頭の中から何もかもが抜け落ちていくような感覚がした。当たり前のように思っていた空間と時間が、着々と終わりへ向かっている。
眼鏡と最近色々あったせいか、生徒会引退という言葉が、俺と眼鏡の距離を離していってしまう。そんな風に思ってしまった。
でも確実に、眼鏡と学校で会う回数は減る。
会おうと思えばいつでも会えるんだろうけど……眼鏡はこれから受験とかもあるだろうし、今より更に忙しくなる。
そうなったら、顔も合わす事も減って、会話すらしなくなって……挙げ句の果てに……
「渋谷君?」
「っ、」
もやもやと色んな事を考えていたら、大崎に肩を叩かれ我に返った。
「先輩、行っちゃったよ?」
「え」
そう言われ、周りを見渡してみると、眼鏡はもう生徒会室から出て行ってしまった後だった。
しまった。あいつと話しをするはずだったのにぼけっと変な事を考えていたから呼び止めるタイミングを無くしてしまった。
「あの会長、俺これで失礼します」
「待って新」
すぐに眼鏡の後を追いかけようとすると、会長に腕を掴まれ呼び止められてしまう。
「急いでるところごめんね。だけどあと一つ、君と大崎に話しておく事があるんだ」
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