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大切な事
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水田くんが何かを口にしようとした瞬間、何者かに背後から腕を引かれた。
慌てて後ろへと振り返ると、そこには
「樹、さっきから呼んでんのに聞こえてねえのかよ」
「……え」
そこには、不機嫌な顔をした成海が立っていた。
どうやら先に掃除が終了したらしく、それを僕に報告する為にここまで来たようだが、成海が僕を呼んでるなんて全く気が付かなかった。
「ああ、ごめん。そっちは終わるの早いね」
「早く終わらせるようにしたんだよ」
僕がそう言うと、成海は眉間にしわを寄せため息をついた。
「というか、サボったりしてないよね?」
「はあ?してねえよ」
「ふふっ、冗談だよ」
「……つか、誰?そいつ?」
成海が僕の後ろを指さす。
それを見て、僕は水田くんの事を思い出した。
「あ、ああ……彼はね」
と、水田くんを成海に紹介しようとした時、
「か、上城先輩っ‼︎‼︎」
水田くんは目をカッと見開き、成海の元へと歩み寄った。
彼の態度に思わず僕と成海は驚いてしまう。
だがその後、成海は肩の力を抜き、怠そうな視線を彼に落とす。
「……誰?」
「あっ、すみませんいきなり大声出して……あの、ボクずっとその……」
「水田くんは生徒会に憧れてるみたいなんだ。嬉しい事だよね。成海、仲良くしてあげて?」
「…………」
成海の目の前であからさまに緊張している水田くんの背中をトンと叩く。
水田くんはもう一度「よろしくお願いします」と成海に向け深々とお辞儀をした。
「それより樹、あの馬鹿がお前の事探してたぞ」
「え」
不意に成海がそう口にする。
あの馬鹿……と言われすぐにそれが誰なのか察しが付くという事は、やっぱり彼は誰から見ても馬鹿だという事なのかな。
「……あー、うん。分かった」
そう言えば、今朝は色々と忙しかったから日野に何も連絡していない。
「すぐ行くって伝えてもらえるかな?」
「自分で言え」
「ほんとに優しくないよねお前って」
成海はそのままこの場を去って行った。
少しは僕の頼みくらい聞いてくれたらいいのに。
にしても、あのうるさいのがここに来る前に一年生を解散させておいた方がいいか。
「ごめんね。僕たちだけで話し込んじゃって……」
「あ……いえ……」
水田くんを見ると、彼はハッとしたかのように僕を見上げた。
「どうしたの?」
「な、何でもないですよ!」
彼は手をブンブンと振り、あはは、と笑った。
先程までの元気な感じではなく、無理に笑ってると言った言葉が合う。そんな笑顔だった。
「ごめんね。怖かったよね?」
「っへ……」
「あいつあんなだけど、本当はいい奴だから。嫌わないであげて」
大方、さっきの成海が見せた態度に問題があるのだろうと思った。
水田くんの頭を撫でると、彼はポッと頬を赤らめる。
初めて新の頭をこうして撫でてあげた時の事が頭に過ぎり、少し懐かしくなる。
「そう言えば、さっき言いかけた事ってなにかな?」
「え……」
「ほら、成海が来る前に君が何か……」
そう言うと、水田くんはピクリと体を震わせた。
「あっ、えっと……その……やっぱり今度にします」
「…………?そう……」
何か大切な事じゃなければいいのだけど。
なんて思いながら、僕は水田くんを連れて他の一年生が待つ場所へと向かった。
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