アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
騙してたの?
-
自分の身にまさかこんな事が起こるなんて思っていなかった。
息苦しさと激しい頭痛と寒気。それに加え恐怖というものをしかと体で感じながら眠りについたのを覚えている。
「……っ……」
目を開けると、知らない天井がそこにあった。
……僕だ。僕が写った写真が天井にまでびっしりと貼られている。
…悪い夢なら良かったのに。
「ゴホッ……ゴホッ……」
頭もまだ痛い。喉も痛い。
よく見れば、僕は真っ白いベッドの上に運ばれていた。
手首をみると分厚くて黒いゴム状の手枷が付けられている。
手枷から伸びる鎖と首につけられた首輪が繋がっており、どうやら首輪の後ろ側にも鎖が繋がれている。
少し体を起こすと後ろ側に繋がれた鎖がピンと張った。
ベッドに縛られている状態だと気付くと、再び絶望感が込み上げてきた。
「……今、何時だろ……」
なんてそんな事をポツリと呟いてしまう。
「あっ、月島先輩っ起きましたか?」
「っ……」
ガチャリと部屋の扉が開き、恐れていた人物がひょっこりと顔を出す。
彼は僕を見るとニコリと笑ったが、もはやその顔は僕にとって恐怖だった。
「ふふっ、嬉しいなぁ〜夢みたいだ。先輩がボクの部屋にいるだなんて」
「……水田くん……これは」
「先輩っ、まずは“おかえりなさい”でしょう?」
「……」
僕の目の前に来た彼は、人差し指を僕の口に当て、ニコリと微笑み首を傾げた。
「これ、外してくれないかな」
「せーんーぱーいっ?」
「っ‼︎」
グチュリと嫌な音を立てて人差し指が僕の口の中に入ってくる。
もう片方の手で頭を掴まれ、彼の方へと顔を引き寄せられる。
「駄目ですよ……ちゃんと“おかえりなさい”って言わなきゃ」
「ぐっ、は…ぁ…っ、…ゔ…」
「ふふっ……ほら、言って下さい」
「っ……はっ……」
目を閉じ顔を背けるが、すぐに自分が取った行動はまずかったと思い知る事になる。
「あれ……なんで言ってくれないんですか……」
「っ‼︎」
髪の毛を思い切り引っ張られ、水田くんの顔がスレスレまで近付く。
「なんでですか?先輩はいい子なのに……ボクの言う事ちゃんと聞けますよね?ねえ?」
「くっ……」
彼の瞳は狂気を孕んでいる。
そのくせその言葉は本当に僕の事をそう思っているようで……
「……っおかえり、なさい……」
……下手に逆らうと危ない。
「ただいまです。先輩っ」
「…………」
どうしてこんな事になってしまったんだろうか。
あの時…学校で水田くんにもらった薬は頭痛薬じゃなかった?……
でも、あの時までの彼の口調や態度は本物だった。
決して演じてるようには見えなかった。
「ゴホッ……」
駄目だ。どうやらまだ風邪が治ってないらしい。
こんな状態で更に最悪だ。
「月島先輩っ、おでこ冷やしましょう?冷えピタ貼ってあげますからこっち向いて下さいっ」
「………………」
下手に、逆らわない方がいい。
彼の方へと振り向き、少し顔を上げる。
ヒヤリとした感触が額に広がった。
熱冷ましシートを貼ると、水田くんはまた嬉しそうな顔をする。
「夜ご飯はお粥ですよっ‼︎ボクがあーんして食べさせてあげますからね」
「………………」
驚いた。普通なら真っ先に逃げる事を考えなくてはならないのに、僕は今、彼の機嫌をなるべく損ねない為にはどうすればいいだろう。なんて事を考えている。
「聞いてもいいかな……」
「はい?」
どこまで口にしていいのか。
その境界線が分からず、つい生唾を飲んでしまう。
「……その格好……制服って事は君はさっき学校から帰って来たって事、だよね?」
「ええ。そうですよ」
……なら、僕は今日一日ずっと眠ってたって事か。
これでだいたい今何時頃かは分かった。
「…………僕が学校を休んだ事、その…誰かなにか言ってなかった?」
「………………」
僕がそう問うと、水田くんはピタリと体を停止させた。
……まずい。この質問はしてはいけなかったかもしれない。
「…はい。してましたよ。上城先輩が」
「…………そ、そう」
思いの外普通の返しが返ってきてホッとする。
……成海は僕が1日休んだくらいじゃ気にはしないだろうな……今はしてほしいと心から願うけど。
「他に誰か言ってなかった?……」
「いいえ。誰も」
「…………」
頭の中に浮かぶ人物。水田くんにそう言われ、少し残念に思う自分がいる。
「大丈夫ですよ。ボクがちゃんとずる休みにならない様にしてあげましたから」
「え?」
ニコリと笑顔を向ける水田くんは僕に何かを見せてきた。
それは、僕の携帯。
「あと、昨日の散らかってた生徒会室も、ボクがちゃんと片付けておきましたから安心して下さいねっ」
「……っ」
生徒会室……
あの写真が頭の中に巡る。
この部屋を見渡す限り、僕の写真が壁一面に貼られているところを見ると、その犯人が誰なのかはすぐに検討がつく。
「僕を……騙してたの?」
「騙す?」
今まで僕に向けていた態度は何だったのか。
ずっと探していた犯人は、こんなにも近くにいたのか……
「先輩……」
「‼︎」
手が震えた瞬間、水田くんの声質が変わる。
「ゔっ‼︎……っ、」
そして肩を思い切り掴まれ、僕はベッドに押し倒された。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
570 / 617