アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
消えた新
-
携帯の画面に映る日付けと時間を見ると、今日も1日早かったと感じた。
家の事があって新は最近忙しそうにしてたけど、母親とは上手くいっているようだ。
安心からか、ため息が出る。
何分経った?鞄を取りに行くだけにしては少し遅すぎやしないか?
あいつを待って20分くらいが経った。
いい加減 遅過ぎる。
電話をかけてはみたが、応答は無い。
新が時間を守らない時はロクなことがない。
胸の辺りがモヤっとする。こういう時の俺の勘は嫌という程当たってしまう。
脱いだばかりの上履きに履き替え、階段を登る。
頭に浮かんだのは例のファンクラブの事だった。
以前の様な窃盗や盗撮行為は見受けられなくなったけど、結局のところ新の体操着はまだ見つかっていない。
樹からも、あれから何の情報も入ってない。
急に何も起きなくなったという事が、逆に気味が悪い。
「新〜」
教室の扉を開けたその先には、誰一人居ない空間が広がっていた。
呼び掛けた声は、相手に届く事なく静かなその教室に溶けていく。
「…………」
胸がざわつき、気が付けば走り出していた。
片っ端から教室の扉を開き、新を呼んでみたけれど、一向にあいつは見つからない。
「くそっ…‼︎」
3階に辿り着き、同じように手前の教室から扉を開く。
男子トイレにも駆け込んでみたがダメだった。
そうこうしている内に、焦りはどんどん大きくなっていく。
その時、意識が完全に逸れていた俺は曲がり角で誰かとぶつかってしまう。
走っていた事もあり、ぶつかった相手はその場に尻もちをついてしまった。
「っ…てて」
「はぁ、はあっ、悪い…」
「上城先輩…?」
こいつ……確か……
「水田……だっけ。新見なかった?」
「え?」
立ち上がるのを手伝ってやると、水田は何かを思い出した目をする。
「ああ〜、さっき上の階で見ましたよ」
「上?」
「はい。何だかすごく怖い顔をしながら階段を登ってましたので、ボクも声が掛けれず……」
階段を登っていた……なんで?
「渋谷先輩にさよならの挨拶をしたかったのですが……」
「階段って、どこの?」
「ほら、中央階段ですよ。屋上に繋がってる」
「了解、さんきゅ」
余計に不安が増した。何だよ屋上って……
怖い顔をしながら?何に対して怒ってるんだよ。
つか、どうして電話に出ない……
「上城先輩っ‼︎」
教えられた中央階段へと向かう途中、呼び止められて振り向く。
「さよならを言っていなかったので」
微笑む水田の顔はあまり印象の良いものではなかった。
「さよならです」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
577 / 617