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交代の時期
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目覚めると、まず最初に日野と目が合った。
あれから何度日野と肌を重ねたのか覚えていないくらい、僕達は夢中になって二人だけの時間を過ごした。
僕を膝に抱き抱えたまま、日野が幸せそうな顔して「おはよう」なんて言うから、起きて早々泣きそうになった。
目覚めた時刻は午前4時過ぎ。
学校があるからと、そのあと桐島さんが僕を車で送ってくれた。
車の後部座席にはすでに水田くんが乗っていて、扉にもたれ掛かり眠っていた。
日野とは玄関先で別れた。
彼はこれからまた本邸に戻り、色々とやる事があると言う。
もう学校には戻れないと言われた時には心底辛くなったが、日野がそう決めたのなら無理には止められない。
学校側には自主退学として申し出るそうだ。
暫くは日野に会えないかもしれないが、それでも大丈夫だと思えるものを僕は日野からもらった。
それに別れ際に、また一つ約束をした。
出した課題は、次に会う時までには絶対に終わらせる事。
あの世間知らずの馬鹿をきちんとした大人にする為には僕の支えが必要だ。
日野の背中、丁度 左肩甲骨の下あたりに彫られていた僕の名前。思い出すだけで複雑な気持ちになる。胸がくすぐったくて、でもあんな非常識な事をする日野のこれからが心配で、だけど本音を言えば言葉に出来ないくらい嬉しい。
浮かれてしまうのも無理はない。
あんな恥ずかしい告白をされたのだから。
「か、会長……これチェックお願いします」
目の前に資料を差し出され、ハッと我にかえる。
「あ、うん。ありがとう」
「………………」
「……?えっと、なにかな?」
受け取ると、ジトっとした目で新が僕を見つめてくる。
数日前の事なんて、この時僕はすっかり忘れてしまっていた。
「あ、新……あの時はごめんね」
「…………別に、気にしてませんけど」
うそ。絶対気にしてるよその顔。
「つか、俺こそすみません……あん時怒鳴ったりして」
指先で頬をかきながら、新はそう言うと僕に背を向けた。
顔や態度に出やすい新は本当に可愛いな。
そう思う度に日野の顔が頭にチラつきついイラッとしてしまう。
集中しようと、渡された資料に目を落とすが、ついつい、目の前の風景に気を取られてしまう。
「大崎ぃ〜、頼むよ俺これの計算苦手なんだよ」
「渋谷君、面倒な書類ばっか僕に回さないでよ」
水田くんと改めて話をすると、今回の生徒会メンバーに振りかかった出来事は彼が責任を持って終わらせると言ってくれた。
信じていいのか初めは迷ったけれど、きちんと反省を見せる水田くんの目に嘘は無いと思ったからお願いする事にした。
「だってお前会計だろ?俺は書記なの記録取り係なの。理系より文系なんだよ〜」
「ぼ、僕だって本当は文系だよ‼︎」
じゃれ合う二人を見ているとなんだか心が和む。
まだ全員揃い切っていないけれど、これが本当の生徒会の姿なんだろうなぁ。
「と、そういえば、成海は何時に来るの?」
時計を確認する。お昼休みに入ってもう30分も経つのに、午後から来れると言っていた成海はまだ来ていない。
「さぁ、どっかで迷子にでもなってるんじゃないですか?」
「迷子?」
あの成海が?と続けて聞くと、新は物凄いドヤ顔を見せた。
一見、成海が学校に復帰出来て嬉しいのかと思ったけれど、どうもその顔はそれけではないようだ。
「しっつれいしまぁーすっ‼︎」
不思議に思っていると、甲高い声と共に勢いよく生徒会室の扉が開いた。
「舞園…」
入って来たのは、演劇部部長の舞園立花。
今日は一段と晴れ晴れとした顔で笑顔を振りまいている。
「どうしたの?今日は何か用あったかな?」
舞園がここに来るときは決まって面倒事も一緒に連れて来る。
明後日はいよいよ生徒会役員の交代式だ。
出来れば何事も問題は起こしたくないのだけれど。
「あー、会長、今わたしが何か問題事を持ち込んだと思いましたね〜?」
「………………」
図星をつかれ、すかさず舞園から目を反らす。
「もう‼︎否定してくれないんですかぁ」
「それより、ここに来た理由を聞かせてもらえるかな?」
僕は舞園が苦手だ。成海並みに聡いから嘘がつけない。
「わたしは道案内をしてあげただけですよ」
「道案内?」
「うふふっ、感謝して下さいね」
そう言った舞園は、生徒会室の扉の方へとくるんと振り向いた。
言った言葉は、僕に向けてのものじゃないとその時分かった。
「副会長っ❤︎」
だけど、やっぱり舞園は問題事しか持ち込まない。
「……成海?」
立ち込める黒いオーラが生徒会室に入って来る。
「副会長はずぅっと3階を行ったり来たりしてたんですよ〜?もぅ見てられなくてわたしが連れて来てあげたんです」
舞園が言った事に対し、納得いかないような顔をして、いつもの倍以上眉間にシワを寄せて不機嫌な顔をしている。
ちょっと今は勘弁してほしい。
「はっ、ほんとに迷子になってらー。だっせ」
新しいものを買いに行く時間が無かったのか、それにしてもせめてコンタクトくらいは付ける選択肢あったでしょ。
「成海、見えてないお前に仕事を任せる事は出来ないよ」
「あ?」
ほら、僕の位置すら見えてない。
「……はぁ……もう」
交代式まで3日を切った。
「新、ちょっとこっち来い」
「はんっ、誰が行くか」
良い雰囲気で引退する事が出来ればいいのだけど。
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