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新の野望
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なんか腑に落ちねぇ。
いっつもあいつに一歩リードされてるというか、さっきだって俺の事を内心小馬鹿にしてたに違いない。
眼鏡の弱点ってなんだ?
視力は皆無なのは十分 分かってる。そこに更に追い討ちをかけてあいつをピーピー泣かしてやる為には何が効果的なんだろう。
……やべえ、眼鏡を泣かすとかなんか凄くね?
「泣かしてぇなぁ」
「誰を?」
「っ⁉︎」
くだらない事と言えばくだらないが、俺にとっては野望でもあった。
「って大崎かよ、ビビらせんな」
「あ、ご、ごめん……何度か名前呼んでたんだけど…」
授業が終わったのなんて全然気付かなかった。
なんか用か?と聞くと、大崎は手をいじりながらパチクリと大きな目で数回瞬きをする。
「ほら、こないだの話を」
「こないだ?」
なんか話したっけ?と考えてみる。
「あー、あの話なぁ」
そういえば、結局あれから大崎と次の会長、副会長にどちらが就くかという話はしなかった。
なんか最近変な事ばっか起きてたし、それどころじゃなかったし。
「あっ、それよりお前が担当してた奴、生徒会入り確定なんだろ?」
身を乗り出してそう言うと、大崎は目をキラキラと輝かせた。
「う、うん‼︎」
「良かったじゃねえかよ。お前無駄に世話焼いてたもんな」
「無駄って……」
「まぁまぁ、結局推薦枠から上がれるのはお前んとこと、会長の……えーと、誰だったけ」
「水田くん?」
「そうそう、その二人だろ?俺は水田嫌いだけどよ」
俺が担当してた奴は、会長が推薦枠から落としちまったし、眼鏡が担当してた奴も知らねえ間に落とされてた。
にしても、あの水田って奴とこれから一緒に活動しなくちゃいけなくなるのはなんか気が乗らねえ。
まぁ、会長が決めた事なら従うけど。
「お前が持ってた奴、どんな感じ?」
その質問に対し、大崎は更に目を光らせる。
「すっごくいい子だよ‼︎あのね、清掃活動外でも僕の事助けてくれたりしたんだよっ」
「……へ、へぇ」
清掃活動ん時、周りの一年よりドジ踏んでたもんな大崎は。
日頃から大崎はどっか危なっかしいし、相変わらず背中丸めて歩くの直ってねぇよな。
「ま、お前が胸張っていい奴って言うんなら、俺はそれ信じるぜ」
「っうん‼︎」
こうやって普通に話しかけてくれるようになったのは嬉しいけど。
「渋谷君、その……さっきの話の続きなんだけど…」
「ああ、そうだった」
なんだかんだで、時間が過ぎるのは早かった気がする。
生徒会室に行くのが当たり前になって、会長と話をするのだって今じゃ緊張感すら無くなった。
相変わらず仕事は山積みだけど、一つ一つやり終えていく達成感も体が覚えてしまった。
「ーーー……ってのが、俺の考え」
「えっ、でも」
眼鏡と出会う事がなければ、多分大崎とだってここまで仲良くなれてなかったかもなぁ。
「俺はそれが一番良いと思うけど?」
「……っ‼︎」
なんだかなぁ。
今の俺がいるのは眼鏡のおかげかも、って少しでも思わせられる事はすげえ腹立つけど、言ってみれば本当の事だ。
あいつには一応感謝してるつもり。
「これからも一緒に頑張ろうぜ、大崎」
「……うん‼︎」
だがしかし、俺は野望を捨てた訳ではない。
ホームルームが終わった後が勝負だ。
あいつが力(視力)を取り戻す前に、俺は何としてでも、眼鏡を泣かさなければならない。
日頃俺がどれだけあいつに屈辱を味合わされているか、身を持って知るといい。
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