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《本番》5
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「…帰ったら、お前は…奴の所へ行くのか?…奴に抱かれる気か…?」
憎しみに近い感情で問う…
「ッ…ぅ」
「奴のもとにッ…俺のものにならないのならッいっそ…」
カズキは逃げないようサクヤの腕を片手で握り…
もう片方の手を、投げ落ちていた鞄へ伸ばす…
中身をさぐり…
サバイバルナイフを掴み出す。
「ッ…嫌っ…」
凶器を目にしたサクヤは、生つばを飲み込み…
恐怖に身体を震わせ逃れようと必死になる。
片手でサクヤの腰を抑えたまま…喉もとへ刃を充てる。
「俺のものにならないなら…、誰のものにもさせやしないッ!」
カズキはカッと瞳を見開いて怒鳴り…
ナイフを逆手に持ち替え…手を震わし、そのまま…勢いよくサクヤの胸を一突きする。
「ァ、痛ッぅう…く、けほっ、かはッ…」
衝撃を受けて…
痛みに呻くサクヤ…
演技に使用したナイフは…先端を保護してあったが…
つきたてられるとかなり痛い…
サクヤはカズキの上で前のめりになり…胸に充てられた凶器…
先が引っ込み、その部分から血のりが流れでてくるナイフの柄を握り締め抑える。
口の中…舌の裏に隠してあった血糊を噛み破り…
ムセながら、口から鮮血を滴らせるサクヤ…
その赤い雫が…カズキの頬へとポタっポタ…と舞い落ちる。
「けほっ、ぅ…は、」
震える唇で言葉を紡ごうと…声を出すが…
その単語は宙に消えて…
グラリと身体が支えを失い…
カズキに覆い被さるように重なる。
そのまま…サクヤはカズキの上で深い緑色の瞳を…静かに閉じてゆく…
そしてしばしの間…
呼吸を止める…
カズキは…震える手で、サクヤを抱きしめて…
言葉なく、その瞳を閉じる…
その瞬間、すーっとカズキの瞳から零れる涙…
「…あいしてる…」
掠れた声が静かに囁かれた…。
数秒の空白のあと…
「はい!オーケイやで!お疲れさん」
監督の声…
一気にまわりが騒がしくなる。
「やっぱ、終撮は違うなぁ」
「サクちゃんがNGださなかったの、珍しい…」
助手たちは口々に好きな事を言っている。
当の本人たちは…撮影の余韻が残り、すぐには動けない…
というかアキラはまだ、カズキの先端を含んだままの状態で…抜きたいのだけど、体勢的に自分では無理…
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