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《本番》9
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「なにが?」
少し振り返って聞くアキラ。
「『オレなんか』って、自分卑下した言い方…意外だなって思ったッス」
いつも真っ直ぐ前を見て他人に弱みなんか見せないような…そんな感じに思ってたから。
カズキは言外に含んで言いアキラを見る。
「そっか?…まぁ、前はそんなでもなかったけど、最近はな…」
なんとなくそう答えてしまう。
「…なんかあったんスか?」
カズキは気になってすぐ聞く…
「別に、なにもないケド…」
「けど?」
さらにつっこんで聞くカズキ…
「…興味深々だな」
「だって、サクヤ先輩の事もっと知りたいし…」
カズキはアキラに、笑顔を向けて続ける。
「…サクヤ先輩と、もっと話がしたいんです、俺」
まっすぐな言葉に嘘はないようだ…
「…ばーか、カズキが面白がるようなものねーよ」
その真っすぐな視線からにげるように言葉を出してアキラは個室6号に入る。
「先輩?」
「待って、アドやるから…はい」
メモに走り書いて、カズキに渡すアキラ。
「ありがとうス!」
嬉しそうに笑うカズキを見て…アキラもつられて微笑む…
「あの…送りますから、返事…くださいね」
個室の戸を押し開けた状態でアキラを見下ろしていう…
「気が向いたらな」
カズキを上目遣いに見上げ、からかうように言う。
「そんな…帰れないっすよ、それじゃ…」
その綺麗なアキラを見て…触れたくなって細い指に手を絡めるカズキ。
「馬鹿、お前もほぼ徹夜で撮影したんだから…早く帰って寝ろよ、元気だな…」
カズキの手を解くことはせず、困った奴だ…と首を傾げる。
「…先輩の手、熱い…」
アキラの手を握りしめながら…少し屈んで呟く。
「…ふ、心が冷たいからだろ?」
アキラは、くすっと笑って離れようとする…
「…先輩」
カズキは、その身体を逃がさないよう片腕で抱き寄せる。
「…カズキ?」
アキラは抱き寄せられ、すっぽりカズキの腕の中に納まる。
片手でカズキとの密着を遮りながら…その相手を見る。
「カズキ?…放せよ」
困った風に息をついて、続けていうと…
「…返事くれるって約束してください」
そっとカズキは囁いてくる。
「カズキ…」
「無視は辛いっスから…先輩」
アキラの言葉をさえぎるように続けて言う。
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