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第5voice. はじめてのアフレコ(16)
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音無さんと別れて、ボクは帰路へとついた。
電車の中、家までの道のりを歩いている時、夕飯を食べている時、お風呂に入っている時……ずっとずっと音無さんのことが頭から離れなくて、そんな自分にボク自身が混乱していた。
そして、相変わらずズキズキしている胸の奥……。
「どうしたんだろう、ボク……」
考え事に没頭していたボクは突然の着信に驚愕し、大袈裟なほどに肩をビクつかせてしまった。
ベッドに放り投げていた携帯電話を手にとって、通話ボタンを押す。
「は、はいっ! 蓮未です!」
『うんうん、わかってるー。奏くんのケータイなのに奏くん以外の人がでたら、なんかもう、『か、奏くん! 今の誰なの? 彼女なのっ?! ひどいっ! 私というものがありながら!!』ってなるよね!』
「なんで女の子がボクのケータイに出るんですか……。というか、蜜樹さんはどういうポジションなんですか」
『なんかあれだね。奏くん、響に似てきたね』
「え」
『そんなことより、私が奏くんに電話した理由はね。あれだよ。アフレコのことなんだよね!』
「え! 何かあったんですか?」
『まぁ、あったと言えばあったかな? たいしたことじゃないんだけどね?』
「は、はぁ。で、それは何でしょう?」
たいしたことじゃない、という蜜樹さんの言葉を信じて、ボクは軽い気持ちで蜜樹さんの次の言葉を待った。
やがて、蜜樹さんから用件を告げられたボクは放心状態。
そんなボクにはお構い無しに蜜樹さんは話を続け、『じゃあ、そういうことだから! よろしくね~っ』という言葉を残して通話が切られた。
「…………え?」
状況が飲み込めず、ボクはとりあえず台本を開いた。
「ここのシーンの女の子がひとり足りない……」
蜜樹さんから伝えられたことを自分の声に乗せて呟いてみると、やっと現実味が帯びてきて……ボクからサーッと血の気が引いていくのを嫌というほどに感じた。
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