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いいご身分なことで
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「……ねえ、あれ…も、人身売買?」
何処からか聞こえたそんな声。
訛りの欠片もない綺麗な発音で紡がれる言葉の端々からは穢れの無い、如何にも世間知らずそうな様子が目に浮かぶ。
いつも横暴でふてぶてしい態度の商人が心なしか猫背を少し伸ばして顔を引き攣らせていた。
声は少し幼かったし、きっと金持ちの親が子供の奴隷でも買いに来たんだろう。
まあ、ただの客ではないのは商人の顔を見れば明らかだった。
-よっぽどの大玉、ってとこか。
足枷をジッと見つめる。
そんなやつなら、或いは-………………
「い、いらっしゃいませ…」
いつも冷たいはずの声が上擦っていることの違和感に思考の海から引き上げられて顔を上げると、上等な身なりをした16〜7歳くらいの少年と保護者らしき男がいた。
……………この顔、どっかで………?
「アーノルド陛下…社会見学でございますか?
このような闇市など、下錢な場所へ直々に赴かれるとは…」
アーノルド…?
………………………ああ、そうか。
ジョナス・アーノルド・エインワーズ。
この国の第一王子だ。
見覚えがあったのは新聞にでも載っていたのか。
ジッとそのまま見つめていると、目が合った。
「商人、彼は?」
「ああ、商品です。-おい、アイヴァン!陛下に挨拶しろ」
「…アイヴァン、です。初めまして、アーノルド陛下」
短い鎖をなんとか除けて跪く。頭を垂れて目を伏せる。もう二度と目を合わせないように。
「顔を、上げて?まだ馴れてないんだ、そうされるの」
穏やか。とても、実に。
「今日は冗談みたいに従順だな。いつもは俺の言うことなんかてこでも聞かないくせに」
ふん、と気に食わなさそうに、不快そうに鼻で笑うのが聞こえた。
「…商人」
「は、はい」
急に声を掛けられた商人がびくりとする。
「彼-アイヴァンを、頂けますか?」
「…は?」
俺の発した間抜けな声に、アーノルドは顔をこちらに向け、ニコリとした。
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