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「……アイヴァン、きみ…名前も話す言葉も完璧にこの国のものだけど…この国の血統じゃないよね?
本当の名前を、教えて?」
「私はアイヴァンです。それ以外、名前などありません」
細部、何処までもが豪華絢爛な馬車の中。
そう訊いてきたジョナス・アーノルド・エインワーズは、〝私〟の回答にガックリと肩を落とした。
「そんなわけ無いだろう…絶対この国の者ではないよ、その顔立ちは…」
「………陛下」
自分でも驚くほど、冷えきった声が出た。
それにしたって、こいつは-この王子は、本当に何も知らない。
奴隷の本名?素性?出生?何でそんなこと知りたがる?
そんな事をして-情が湧いてしまったら、どうするというんだ。
「必要性のない詮索は、控えた方がよろしいですよ。
それに、そんなに知りたいのなら、権力に物を言わせてルートを辿ればいいのです。
……………あなたの立場なら、簡単でしょう」
顔は合わせない。あくまで顔は、目線は、真っ正面。
「奴隷から聞き出した言葉など、信用するものではありません。
あくまで従順で、抗うことのない家畜でも作ればいいのです。
……まあ、私にそのような気は毛頭ございませんがね」
くつくつと、喉を震わせて嫌味ったらしく笑う。
そうだ。従う気なんて、毛頭ない。
「…っ、「なので、陛下」」
そこで初めて顔を見遣れば、なんとも情けない顔をしていた。
こんなのが主人って、奴隷人生長いけど、初めてでなんか笑えた。情けない主人は困惑気味で眉を八の字に寄せる。
間抜けに半開きにした口へ指を寄せてすっと親指でなぞる。ピク、と腕が揺れたのを目の端に捉えながら、口を開く。
「ゲーム、しましょう?」
〝俺〟のことが本当に必要なら、証明してもらおう。
単純な、簡単な。
「ルール、なんて一つです。私から奴隷としての意識を消し去れたら陛下の勝ち。簡単、です。陛下が本気ならば、きっと」
さて、吉と出るか凶と出るか。
ねことおうじさまの追いかけっこ。
ねことおうじさまの隠れんぼ。
勝者は、どっち?
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