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物は大切に
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「っ、お離しください、陛下。私は、―………」
「物でもなんでも、大切にしないとダメだよ。ほら、足だーして」
あああああああああああ、もう。
何なんだ、この王子。
いきなり街中で馬車止めて、従者に遣い頼んだかと思ったら薬なんか買って来やがった。
「ああ、もう。
ほら、変に座席に擦ったりするから腫れてきてるよ…痛いでしょ、これは…」
「平気、です。離してください。陛下の手が汚れます」
足枷の錆や、闇市の砂や泥。こびり付いた血。更にたった今出てきた新しい血、膿。
傷一つ無い、長く綺麗な指がみるみる内に赤く、黄色く、茶色く染まっていく。
「…〜〜〜っ!」
「あ、滲みた?ごめんね、ちょっと我慢してて。あとちょっとだから」
軟膏が塗り広げられる度にジクジクとした痛みが傷口を抉る様に染み込んでいく。
「足が使い物にならなくなったら不便でしょ?だから動かせる間にきちんと手当しなくちゃ。ね?」
意味が、解らなかった。
何で、どうして、この王子は…
視界がぼやけて、目の周りが熱くなって、頬が濡れた感覚がした。
「え、ちょ、何で泣いてるの、そんなに痛かった…?」
「…っなん、でも…ありません…」
自分でも分からなかった。
けれど、その出来事は確かに〝俺〟に何かを残した。
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