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対等な立場
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『本当に取らないの?ダメだよ、錆びていて、傷が更に酷くなっちゃう』
昨日、買われた時、足枷を鎖だけ取って枷の部分を付けっぱなしにしてくれと頼んだところ、そう言って主人は渋った。
どうしても身につけていたかったから、持ち帰って傷が治ったら改めて付けさせてもらう約束を取り付けた。
この枷がないとゲームを持ちかける意味がない。
あの時期待した意味も、ない。
巻かれた足首の包帯は主人自らの手によって再び清潔で新しいものに変わっている。
真っ白なそれは、見ているとどうにもこそばゆい感覚に襲われる。
自分には縁の無いように思っていた。
主人がまさかここまで奴隷に対する扱いを知らないとは思わず、説明しても対応が変わらないとはもっと思わなかった。
本当に、純粋で。無垢で。綺麗で、綺麗過ぎて―無力だ。
エドガー氏に詰め寄る主人は、幼く、弱く、脆く、今にも主人を構成する〝ナニカ〟が崩れてしまいそうだ。
「……だ…………」
小さく、ここからでは上手く聞き取れない主人の呟きはエドガー氏の顔色をサッと青くさせた。
「―っ!?ジョ、」
唐突に手を引かれ、身体がよろめく。主人の顔は、この角度では見えない。
「…アイヴァン、もうここを出よう?ここを出れば、僕と君は対等な立場になれる筈だ…」
虚ろな目。考える事をやめた目。希望を無くした目。けれども、絶望出来ない目。
気持ちの悪くなる、既視感を憶えた。
ああ、駄目、だ。気分が悪くなる。その目。その目は、前にも何処かで沢山―…………
鏡 汚い床 染められた髪 迫ってくる手
鎖、あ、あ、あ、ああ、あ、あ? 弾けて、記憶、が、過去が、
居た、のは、 小さい、大きい? 大人も、子供も 綺麗なやつも、 ああ、これ、だ。
あの、闇市の奴らだ。
捕まって、鎖で繋がれて、売られて、逃げられないのに、何処かで自由を期待して。
「もう嫌だよ…ねえ、アイヴァン」
何度も何度も裏切られて、失望させられた奴の目だ。
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