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染まりやすいからこそ
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主人といると変な気持に囚われる。
すっかりすすけて元の色も解らないくらい真っ黒になった筈の自分が少しずつ、確実に吸い取られて…元の色に戻ってしまいそうな。
染まりやすい透明が黒を吸い取って少しずつその闇に侵食されている。
冒されている。侵されている。犯されている。
純粋な透明が、黒に穢されている。
それに比例して、〝私〟の下に押し込めた〝俺〟が少しずつ引き摺り出される。
〝アイヴァン〟が助かる代わりに〝ジョナス〟が身代わりの様に、引き換えの様に、対価の様に。
どんどんあの、昏い世界に主人が溺れていってしまっている気がするのだ。
「…………ジョナス様」
「………」
「戻りましょう。皆様きっと心配しております。そろそろ捜索隊も来る頃でしょう。こんなところで騒ぎになっては在らぬ噂も立ちますので、王城へ引き返しましょう」
「うん…」
立ち上がり、少し遠回りだが大通りから安全に帰ることにした。
「大通りから抜けて行けば小道を通るより安全だと思います。…ただ、その身なりが」
目立ちすぎている。
既に世の中に主人の顔は出回っているし、何よりその服だ。
「…走る?」
「もっと危険です。周りが見えづらいですし、咄嗟に止まれない。加えてバランスを崩しやすい。脇道から引っ張られたら体勢を直す間も無く連れ去られるだけです。そうなれば―良くて人質、悪くて…闇市」
「…っ!」
「なので歩きましょう。大丈夫です。王城はそこまで遠くありません。しばらく動いてなかった私がジョナス様の全力疾走に最後まで付いて来られたのが何よりの証拠でしょう」
「…そう、だね」
闇市、という言葉に一瞬にして落ち込む主人。何処かにスイッチでもあるかの様にそれはそれはコロコロと素直に表情が切り替わる。
と、そんな事を話しながら歩いていると大通りに出ていた。
「いざという時は真っ先にお逃げください。何処でもいい。この国の軍は優秀ですから、ジョナス様を見つけ出すのは容易い筈―っ」
「アイヴァン!?」
「…白昼堂々と…やっぱりそう簡単に事は運ばない…ってか」
折角板についてきていた敬語を物の見事に剥ぎ取ってくれたのは見覚えのある顔だった。
「昨日振りだな、アイヴァン」
まったく、何処までも賎しい。
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