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買い戻す
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「お前を買い戻したいってお方がいてなぁ…悪いが、攫わしてもらおうか」
買い『戻し』たいお方、なんて一人しかいないだろう。
「あぃ「逃げて!!!」」
目の前で狼狽える主人に精一杯叫ぶ。
今この身体を地べたに押し付けているのはあの商人。きっと、コイツなら相手が王族だろうと何だろうと関係ない。商品になるか、ならないか。その判断だけで動くような下衆だ。
「早く」
「で、も…っ「昨日から散々申しているでしょう」」
まだ動かない。後ろの下衆商人は既に値踏みを始めている。
焦れったい。早く逃げろと、言っているのに。
「私は奴隷です。奴隷とはすなわち道具。
これは、落としたものを拾われて失くしてしまった、そう考えるのです」
だから―早く。
「弟君の方が、よっぽど物分かりがいいです、よ………」
「もういいか?無駄話も感動的なお別れも俺は好まないんでね。
安心しな。今日の目的はコイツ。王子様は見逃してやるからさっさと帰るこったな、と…」
背中の辺りを叩かれて意識が遠のく。瞼が降りてきて、何となく身体が浮いた気もしたけど、よく分からなかった。
最後に視界に映ったのは悲痛そうに顔を歪めた主人が踵を返して走り始めるところだった。
――それでいい。
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