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とても幸せだった
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昔は〝俺〟にだって、家族がいて、家があって、注がれる愛があった。
『××は将来何になりたい?』
穏やかに優しく微笑んで、柔らかい雰囲気を常にまとっていた母。
―おとうさんみたいな すごいおいしゃさんになりたい!
遠い昔の〝俺〟が舌っ足らずにそう言う。
するとそんな〝俺〟を見て父が嬉しそうにはにかんで大きな手で小さな頭を思いっきり頭を撫でた。
『嬉しいなぁ。じゃあ沢山勉強しないとな!』
しあわせ。当たり前に繰り広げられるような何より大切な幸せ。
そう、その頃は幸せだった。他に何もいらないくらい、幸せに溢れていた。
壊れたしあわせはあっという間に、何もいらないくらいの絶望に変わった。
『楽に生きたいか?なら、棄てればいい。何もかも空っぽにして、望むことを、祈ることを、願うことを、辞めればいい。―カンタンだろう?』
昔の記憶にあの商人が厭らしく笑っていた。
さも当然のように、嗤って、いた。
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