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王位
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自分が王族の身だということは知っていた。
時折届く父宛の封筒。その手紙の封になっている蝋に押されているのは王家の紋。
一応、王族ではあったけど、〝俺〟は現国王の息子の弟の子。
つまり枝分かれした先の、ちょっと本家から離れた存在。第一王子と、―第三王子は居ないから―第二王子に何かあった時の保険だ。
第二王子は王位継承権放棄。認められてないけど、本人に継ぐ気は皆無らしい。医者になったのがいい証拠。
だからきっと第一王子に何かあったら継ぐのは〝俺〟。
流石に名医とまで囁かれるあの人を連れ戻す訳には行かないだろう。それなら嘱託医にでもした方がよっぽどメリットがある。
「クロード・ベルジェ・シャロン卿」
凛とした声が重厚なドアの向こうから響いた。
普段と違う言語。でも、聞き間違う訳が無い。
「…………ジョナス、さま…?」
「この呼び掛けに、否応―無反応でやり過ごすか…お前が大声で叫ぶか…どうする?」
耳元で小さく囁く声は朦朧とする頭によく沁みていった。
「そちらに、アイヴァン…いえ、貴方にとっては〝イヴォン〟がいますね?
―今すぐここを明け渡し、彼を返してください」
「………まぁ、ダンマリを決め込んだところで、バレるのは時間の問題だろうがな。…しかしお前は自ら叫ぶことは絶対にないだろう…?」
そこまで言うと、クロード卿は耳元から口を離し、ドアへ向いて息を大きく吸った。
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